鋼材に代わる構造用軽量素材として注目を集める炭素繊維強化樹脂(CFRP)。車体軽量化のキーマテリアルとして応用研究が活発化しており、今年5月の「人とくるまの技術展」では、ニッパツがサイドフレームとフロアパネルにCFRPを適用した自動車シートを展示するなど製品開発が加速している。しかし、普及拡大に向けては製品コストの低減が課題。同シートも従来比50%の軽量化(適用部品)と45%の剛性向上を実現するも、商品化にはコスト低減が不可欠。利用技術・応用製品の開発が進むなか、コストを含むスペックの最適化が急がれる。
 自動車におけるCFRP利用はすでに1990年代からF1などレーシングカーにおいて進められてきた。近年では各国政府の燃費規制の強化を背景に、市販車へと適用拡大の取り組みが広がっている。自動車各社が部材のCFRP化を進めるなか、トヨタ自動車ではメインボディーの65%にCFRPを採用した「レクサスLFA」を開発。世界初の自動車メーカーによる内製車として2010年に発売している。
 レクサスLFAにはプリプレグ、RTM、C?SMCという3種類のCFRPが採用されている。物性的に最も優れたプリプレグを1次骨格材料として使用しており、採用にあたってはカーボン繊維束をストレート化することで脱気性向上および、それによる高強度化を図った。また、プリプレグに次ぐ性能のRTMを2次骨格へ適用するとともに、生産性および成形自由度の高いC?SMCは複雑形状パネルおよびCFに適したビニルエステル樹脂の開発などにより構造部材で利用している。
 注目すべきはCFRP採用のための新生産技術。炭素繊維の3次元織り技術、大型フロアの一体成形を可能とする新RTM成形法およびハイサイクル成形を開発しており、3次元織り技術ではニアネットシェイプや複雑な3次元形状をしたプリフォームの自動製造を実現。また新RTM成形法では、発泡コアやコルゲートなど10部品をフロアパネルとして一体化しており、作業工数や金型、機械加工などの大幅な削減を可能としている。とくに同成形法では、軽量化とともに樹脂化のメリットである形状自由度と部品の統合化を最大限に活用しており、樹脂化の方向性を示唆する成形技術として今後の展開が期待される。
 1000万円を超す高級車向け材料として完成の域に達しているCFRPだが、「2020年代にはコスト・生産性でアルミの外板レベルまでもっていきたい」(トヨタ自動車)と、さらなる低コスト化を推進する。
 CFRPの適用拡大に向けては、炭素繊維メーカーを中心に熱可塑性樹脂への置換を軸にコスト低減の研究開発が進められているなか、ダイセルポリマーでは射出成形による長繊維強化熱可塑性樹脂の用途拡大を積極化している。同社製品は完全含浸により樹脂中の繊維分散性を向上することで炭素繊維の物性を最大限に活用できるのが特徴。SMCやVaRTM並みの強度特性を実現できることから、06年からフロントエンドモジュールのラジエーターコアサポート向けにCFを20%配合したポリプロピレン(PP)が採用されている。現在、高強度化ニーズにはインサート成形によるUDテープとの複合化を提案しているほか、炭素繊維の電磁波シールド特性を生かした電池ユニットなどへの展開にも取り組んでいる。
 現在、炭素繊維をはじめとした素原料の低コスト化と組み立て工程を含めた生産性向上を可能とする加工技術の開発の取り組みが活発化しており、今後の動向が注目される。

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