ガラスを代替する樹脂グレージングは、素材であるポリカーボネート(PC)の特性からガラスに比べて耐衝撃性や断熱性に優れるほか、重量が約半分と軽いのが特徴。また、射出成形で成形できることから形状自由度が高く、複数部材の一体成形が可能であり車両デザインや生産性の向上に寄与する。先行する欧州ではフロントガラスへの適用検討が開始されるなど新たな自動車部材として期待が高まっている。
 多くの利点を有する樹脂グレージングだがPCは柔らかく傷付きやすい、紫外線で劣化する、ガラスに比べて高コストといった課題を抱えており、普及拡大のためにはこれら問題の解決が不可欠。表面硬度に関してはハードコードと高硬度化技術による開発が進んでおり、すでにレニアスが光改質で、SABICイノベーティブプラスチックスの子会社・米国エグザテックLLCがプラズマ成膜技術により日米欧の安全性要求規格に対応した耐摩耗性を実現。SABICプラでは採用拡大を狙いにアルバックと量産用プラズマ成膜装置を共同開発し、アルバックが販売に乗り出した。また、高付加価値化を狙った機能の複合化では、レニアスがコーティング技術による赤外線遮蔽機能や光触媒を応用した防汚・防曇・結露防止、ナノインプリント技術による防曇・反射防止機能の開発・実現している。
 一方、素材であるPC樹脂もグレージング向け開発が活発に取り組まれている。成形性や耐衝撃性といった基本特性とともにガラス代替としては可視光透過率や透過歪、色相といった高い次元での透明性の確保が、周辺部材(黒枠材)向けにはPCアロイとエラストマー・無機フィラーといった強化材の配合技術をベースに収縮特性や滞留熱安定性といった要求特性を満たす材料が開発されている。材料特性は成形技術と表裏一体であり、グレージング用PCを展開する三菱エンジニアリングプラスチックスでは直列対向反転式多色成形機を導入し、成形技術の高度化を図っている。とくに流動性や収縮率といった成形時の樹脂の挙動は品質に直結するため同社では積極的にCAE技術を活用した解析を行い技術の高度化を推進するほか、すでに3色成形技術を確立している。
 こうした材料・要素技術の開発を背景に国内自動車メーカーでも採用が広がりつつある。世界で3社ある自動車用樹脂グレージングの量産メーカーの1社・豊田自動織機では、レクサスLFAに続いてプリウスαでは1・6平方メートルの世界最大面積のパノラマルーフを製品化。電子部品工場並みの清浄度を目的に工程の自動化を進めることで、約8キログラムの軽量化と85%の組み付け部品の削減を実現している。同社では2色成形による部品の一体化を実現したパノラマルーフまでを第1ステップと位置付けており、第2ステップでは低コスト化や高硬度化、設計自由度を生かすための成形技術の向上に取り組み、第3ステップではフロントガラスやフロントサイドガラス、高機能ルーフなどの実用化を目指す計画だ。
 すでに実用の域に達している樹脂グレージングだが、普及拡大に向けた最大の課題は耐候性。半永久的なガラスに対してPCは紫外線吸収による劣化が避けられず、スペックとして「10年・15万キロメートルなのか、20年・30万キロメートルなのかを決めることが必要」(部材メーカー)。製品スペックさえ定まればそこに向けた材料・関連技術の研究開発も加速し、一気に普及することが予想されることから今後の動向が注目される。(おわり)

自動車関連ニュースの最新記事もっと見る