住友ゴム工業は、独自のシミュレーション技術をベースにタイヤ材料の高機能化を推進する。ポリマーやカーボンに続いて、新たに天然ゴムの特性向上に成功した。開発したUPNRは、材料シミュレーションにより得られた知見をもとに、天然ゴムに含まれる不純物を徹底的に除去したもの。高純度化により低燃費性能と耐久性を高い次元で両立しているのが特徴。来年1月からパイロットプラントによる年間数百トン規模での量産を開始する計画であり、2014年以降に発売する新製品で実用化していく。
 同社は、タイヤ製品の高性能化を目指して、シミュレーション技術を応用した新材料開発を推進中。その歴史は古く92年にシミュレーションに関する専門部門を立ち上げるとともに、03年に転動するタイヤのコンパウンドの動きを解明するシミュレーション技術(デジコンパウンド)を確立し、同技術に基づくコンパウンドを採用した製品を市場投入している。
 現在は11年に確立した4Dナノデザインをベースに研究開発を展開中。同技術は通常使う3次元に時間軸を加えた4つの次元で解析・設計するナノレベルの材料開発技術であり、大規模材料FEM(有限要素法)シミュレーションとMD(分子動力学)シミュレーション、MO(分子軌道法)シミュレーションで構成される。従来のシミュレーション技術では捉えきれなかったナノ領域の事象を可視化することで、材料が有するポテンシャルを最大限に引き出すことが可能。すでにスプリング8や地球シミュレーターといった世界最高レベルの国内研究施設との連携により、変性基の位置や強度を高精度に制御した両末端マルチ変性ポリマーやナノレベルの性状コントロールによりポリマーとの結合力を高めたカーボンなど最先端材料を実用化している。
 天然ゴムに関しては4Dナノデザインにより、高純度化でカーボンとの相互作用が高まり極微細領域までカーボンの分散性が向上し低燃費性能が改善することや、ゴム分子とカーボンの結合が増加することで耐久性(耐摩耗性)が上がることを解明。UPNRの開発では、化学処理および特殊技術により、ラテックスを原料に天然ゴム分子を覆うたん白質およびリン脂質を徹底的に除去する製造技術を開発した。品質はラテックスのグレードではなく鮮度に依存し、既存の天然ゴムに対して高価な反面、物性が安定しているといった特徴を有する。
 量産化は、製造プロセスの改良により製造時の品質劣化を改善することで実現。同社ではタイ・チョンブリ県にパイロットプラントを建設する計画であり、15年には年間1500トン規模の生産を予定している。低燃費タイヤをはじめとした新コンセプトタイヤで使用していく方針であり、本格量産プラントの建設についても検討していく方針だ。
 現状の4Dナノデザインは、ナノレベルおよびミリメートルスケールの構造領域をカバーするも数十ナノメートル?数百ナノメートルの領域には対応できていない。15年の完成予定で開発に取り組んでいるアドバンスド4Dナノデザインでは、ナノメートルからミリメートルまでの構造領域を一貫してカバーすることで、破壊の起点や成長といったゴム内部のリアルな現象をマルチスケールで可視化することを目指す。さらに20年の技術確立を想定しているネクスト4Dナノデザインではセンチメートルスケールのシミュレーションを実現する方針であり、材料からタイヤ性能までを予測可能とすることで先進的な材料創出および異次元のタイヤ性能実現につなげていく。

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