住友ゴム工業は、コンピューターシミュレーション技術をベースにタイヤの高性能化を推進する。サブナノメートル?センチメートルの領域をマルチスケールでシミュレーションできる新材料開発技術ADVANCED 4D NANO DESIGNを年内に完成させ、来年早々にも応用製品を上市する計画。新技術は各スケールの構造および運動解析と階層間の相互作用をトータルに把握でき、材料を科学的かつ合理的にナノレベルで高精度に設計することが可能。同社では進化したシミュレーション技術をベースにタイヤの背反性能であるグリップ性能、低燃費性能、耐摩耗性能のさらなる向上を目指す。
 同社のシミュレーション技術の取り組みは、タイヤシミュレーションとして1998年に実用化した回転するタイヤをシミュレートするDRS(デジタル・ローリング・シミュレーション)に始まる。01年にシミュレーション領域の拡張により実際の走行状態に近いシミュレーションを可能にしたDRS?を、06年にはタイヤ内部の空気圧力変動を解析するDRS?を開発することでタイヤ構造を進化させてきた。
 材料開発ではデジコンパウンド技術を03年に開発。同技術はタイヤのゴム内部のさまざまなメカニズムをナノレベルで解明したもので、これによりゴム材料開発の大幅な効率化を図った。また、11年に実用化した4D NANO DESIGNでは、大型放射光研究施設SPring?8における高輝度X線によるナノ・原子レベルの構造解析データをスーパーコンピューターによる大規模シミュレーションにかけることで、変形させた際のナノレベルの分子構造を3Dデータに時間変化を加えた4つの次元で捉えることに成功。これまで可視化できなかったナノ領域の構造解明により、フィラー3次元ネットワーク構造(?ミクロンレベル)、架橋不均一構造(?サブミクロンレベル)、ポリマー・架橋構造(?ナノレベル)、フィラー界面ポリマー結合(?サブナノレベル)といった領域別の解析を可能としている。
 開発中のADVANCED 4D NANO DESIGNは、SPring?8での構造解析データと大強度陽子加速器施設J?PARCによる運動解析データを活用し、1秒間に1京回の計算速度を有するスーパーコンピューター「京」で大規模分子シミュレーションにかけることでゴム内部の構造をマルチスケールでリアルに再現する。「これだけの施設が全て揃っているのは日本だけ」(同社)であり、まさに最先端のシミュレーション技術。大規模でありながらシリカ粒子周りのポリマーやシリカとカップリング剤の結合を精緻に表現でき、ポリマー分子が剥離するミクロな破壊現象からマクロな摩耗現象までをシームレスに可視化することなどが可能。現在の4D NANO DESIGNでは不可能な階層間の相互作用の解明により、相反性能の要因把握などにより新材料や新配合の開発が今まで以上に効率的にできる。
 4D NANO DESIGNでは両末端マルチ変性ポリマーやナノフィットゴム、高純度天然ゴム(UPNR)といった新材料の開発により大幅なタイヤ性能の向上を実現してきた。また、昨年はタイヤ製造プロセス用のタイヤ マニュファクチュアリング シミュレーション技術を開発し、工程の高度化などを進めている。来年発売する乗用車タイヤの新製品では、既存材料の改良・改質や新材料の採用により、画期的な耐摩耗性能の実現とそれにともなう燃費性能、グリップ性能の向上が図られる見通しだ。

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