ホンダは燃料電池自動車(FCV)の本格普及に向け、今年3月に「クラリティ FUEL CELL」を発売した。2008年のFCX クラリティに続く新型車。セダンタイプのFCVとして世界初の5人乗りとなり、ゼロエミッションビークルで世界トップクラスとなる約750キロメートルの1充填走行距離を実現する。新型FCVは既存のラインアップとは異なる新たなセグメントの創造を目指しており、先進の設計および材料・加工技術が採用されている。
 クラリティ FUEL CELLの水素安全の考え方は、燃料を?漏らさない?漏れたら止める?速やかに排出する?を基本コンセプトとする。燃料電池スタックと水素タンクを衝突時の衝撃保護対象に新たに加えており、クラッシャブルゾーンは車両の前後ともに従来車種の約半分程度しかない。開発では衝撃荷重の抑制を目的に車重上限を設定しており、その車体は超高張力鋼板(ハイテン材)を広範囲に採用したボディー骨格と積極的なアルミ化により、衝撃吸収性能の向上と軽量化を高次元で両立するFCV専用設計となっている。
 ボディー骨格では、成形性に優れた高λ型980メガパスカル級ハイテン材を自動車部品として世界で初めて採用。また、1500メガパスカル級ホットスタンプ(熱間成形)材の適用範囲を拡大しており、ハイテン化率はアコードの2倍となる約40%へ上昇している。また、アルミのサブフレーム自体をロードパス(荷重分散経路)として利用しており、ショートストロークでの水素安全技術に貢献している。
 基本骨格をハイテン材で固めつつフロントフードやフェンダー、ドア、トランクリッドといったパネル部材をはじめ、ステアリングハンバービームなどにアルミを採用することで軽量化を推進。サスペンションもフロントのロアアームおよびリアのすべてのアームをスチール製からアルミ鍛造製に変更したほか、タイロッドは世界初となる高強度アルミ鍛造法の採用により20%の軽量化を図った。さらにクラッシャブルゾーンの半減を踏まえて、フロントサブフレームを一体中空成形のアルミダイキャスト製にすることで剛性を高めつつ世界最軽量を実現するとともに、リアサブフレームもスクイズキャスト製法により剛性・強度を確保しながら重量を27%軽減。これら改良により設定重量内に収まる軽量車体を実現した。
 樹脂部材では世界初となるGFRPハイブリッド成形リアバンパービームを新たに開発。不連続ガラス繊維と連続ガラス繊維を積層した独自のハイブリッド成形により、成形性の向上と軽量かつ高強度な構造を実現した。また、重量の軽減を目的に一般にスチールを用いるフロントバルクヘッドを樹脂製に、そのボディーとの接合部分をアルミに置換しており、こうした取り組みを通じて複合化に関する技術的知見やノウハウを蓄積している。
 衝撃吸収性能を高めながら約15%の軽量化を実現した次世代スチール製ボディーは、先進技術の採用により軽量材料(780メガパスカル級以上のハイテン材、アルミ、樹脂)の使用率が55%と従来のガソリン車の29%から大幅に拡大している。同社では今回の開発成果をベースに電費向上や車両運動性能の確保を目的としたさらなる軽量化を推進する一方で、今後は開発モデルの車格に合わせて先進技術の応用展開を図っていく考えだ。

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