燃料電池自動車(FCV)という新たなセグメントの創出を目指すCLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)。ホンダの環境アプローチの具現化に取り組むなか、室内設計でこだわったのが「大人5人で乗れるセダンの上品さ」。高分子系素材の場合、再生材やバイオマス原料への置換により品質特性が劣化するケースが多いが、クラリティの開発では環境配慮と品質の高次元での両立を追求した。また、今回は車内空気の清浄化技術の搭載により乗員の健康に貢献するという新たな価値も提案しており、より快適な空間の提供によりFCVの本格普及を狙う。
 車室の環境配慮は使用素材のバイオマス化、再生材の採用および製造工程におけるCO2排出低減という3つのアプローチで取り組んだ。バイオマス化の取り組みでは、ルーフライニングやサンバイザー、ステップサイドといった樹脂部材において、原料ポリマーにPLA(ポリ乳酸)などの植物由来素材をブレンドすることでバイオマス比率を向上。前モデルのFCXクラリティでは「かなり突っ込んで取り組んだ」(同社)が、今回は機能的に全面置換が可能なケースでも質感との両立を優先したという。また、シートサイドなどに用いたレザー調の合皮(プライムスムース)ではサトウキビの搾りかすを原料とする抽出油繊維を基布として裏生地に使用している。
 再生材の採用では、リサイクルポリエステル糸を使用した東レのウルトラスエードを自動車内装材として世界で初めて採用。再生材の配合比率約40%を確保しつつ肌触りや上質さを実現することで、インストルメントパネルや前後のドアライニングに施したソフトパッド表皮など広範な面積への適用を可能とした。クラリティ フューエル セルでは内装表面積の約80%に環境負荷を低減したこれら素材を採用している。
 さらに金型のアルミ化により製造工程で排出されるCO2量の低減を推進した。スチールに対して柔らかいアルミ合金は金型加工に要する電力消費量をCO2換算で約30%低減することが可能だ。しかし、一方でその耐久性から生産数量がスチール製より少なくなるほか、部材表面の装飾となるシボ加工の作り直しができないといったリスクがある。同社ではサプライヤーと共同でこれら課題に対応し、リアトレイやピラーガーニッシュなどの樹脂部材で金型をアルミ製に切り替えることで低炭素製造を実現した。
 これらの環境配慮の取り組みに加え、今回は「Total Air Quality Management」という考え方のもと、車内空間の新たな価値として清浄な空気環境を提案する。この「空気質」の向上のために採用した技術は、プラズマクラスター技術やアレルキャッチャー加工を施したフロアマット、エアコンフィルターに採用したアレルフリー高性能脱臭フィルターなどいずれも国内メーカーが開発。これらは他の機種にも展開可能な技術として用意しており、日本発の環境技術として独自の展開も視野に入れる。

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