スーパーコンピューターを活用した金属材料の開発プロセスに関する研究が進展している。新たに東京大学大学院などの研究グループが金属組織の生成メカニズムの解明に成功する一方、東北大学金属材料研究所などの研究グループは「強さ(強度)」の仕組みを電子状態(ナノ)、原子配列(ミクロ)、微細組織(メソ)というマルチスケールで解析する手法を確立した。これら成果は材料開発の効率化や高精度化などに役立つもので、応用により、より高機能な金属材料の開発・実用化が期待される。
 東京大学大学院、京都工芸繊維大学および北海道大学大学院の研究グループは、スーパーコンピューターを用いて純金属の過冷却融液から実験では不可能な理想的な均質核の生成過程を再現することに成功。これにより凝固過程の出発点となる核生成で、衛星核の発現や特定に方位関係を持った別の結晶粒が不均質核を生成するなどの局所的な不均一性が発現することを明らかにした。
 これまでは核生成現象は発生確率に大きく依存するため、複数の核が同時多発的に生成して組織を形成する過程を統一的に解析・理解することが、計算系の時空間スケールの限界から不可能だった。今回はGPU(グラフィックプロセッサー)で並列可能な分子動力学法コードを独自に開発することで、GPUスパコン「TSUBAME2.5」上で10億原子以上の全原子の位置と速度を追跡する分子動力学法シミュレーションを実現しており、スーパーコンピューターを活用した材料プロセス研究の新しい方向性として注目される。
 一方、東北大学金属材料研究所および同大学工学研究科と産業技術総合研究所、大阪大学の研究グループは、電磁鋼板で有名な鉄(Fe)?ケイ素(Si)を対象にスーパーコンピューターによる解析を実施し、材料の「強さ」の背後に磁性の効果など多様な物理が関与していることを初めて解明。また、Feの中に入れた時のSiの挙動と強さとの関係を電子論と分子動力学法という最新の計算手法を用いて解析し、これまで分からなかった欠陥の周囲の原子の位置や動きを可視化することに成功した。
 「実材料の強度」には原子構造よりもややスケールの大きな内部組織が影響する。今回の成果は実験データやパラメーターを用いずに計算のみから強度を予測したり解析する手法を提案するものであり、Fe?Si以外の材料にも適用することも可能。研究成果の応用により材料設計の緻密化、効率化の促進が期待される。

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