近年、廃プラスチック問題がクローズアップされている。しかしプラスチックは極めて有用な材料である。機能面でも衛生面でも使用しなければ、社会生活の多くが成り立たないのは疑いようのない事実だ。大切なのは「使わないこと」ではなく「適切に管理すること」であり「適切に処理することで地球環境が保全できる」と、もっとアピールするべきではないか。
 適切な処理方法として世論で理想と考えられているのはマテリアルリサイクル。プラスチックのポリマー構造を、そのまま再利用する仕組みは理解されやすく、サーマルリサイクルに比べて「やるべき取り組み」と捉えられやすい。しかしマテリアルリサイクルは、回収のコストおよびエネルギーが課題となりがち。また不純物が混じったり、複数のポリマーや添加剤との複合体になっていたりして適用できないケースが多々ある。冷静に考えると、かえって環境負荷を大きくすることもあり得る。マテリアルリサイクルが万能なわけではない。
 そのなかでマテリアルリサイクルのやり方の一つとして注目されるのが、改質アスファルト原料としての廃プラの使用だ。改質アスファルトとは、石油系のアスファルトにポリマーなどを加えて耐流動性や耐摩耗性、耐剥離性などを改善するもの。ここに廃プラを用いる動きが世界中で起こりつつある。
 英国やオランダの企業が廃プラを骨材としたり、成形品としたりして道路に用いている。東南アジアやインドでも、廃プラを配合したアスファルトによる道路舗装の研究や実用化が始まっている。単にごみ処理のためではない。廃プラを用いることで骨材とアスファルトのバインダーとなり、耐クラッキング性が高まるほか、軟化点が下がることで施工温度を下げられるメリットもあるという。マレーシアの事例では、通常の舗装部分では6カ月でクラックが発生したのに対し、廃プラ改質部位は12カ月経過後も問題は発生しなかったそうだ。また廃プラはアスファルトに融解してマイクロプラの流出もないという。
 この利用法は、排出された廃プラを地場で使えるというメリットがある。どんな廃プラでも可能というわけではないが、必要な条件をクリアできれば大きな輸送コストをかけずに「地消」できる。道路向けの廃プラ利用は、新興国の地場企業から世界的な化学大手まで取り組み始めており、インドでは相当な実績も上がっている。この手法の長所、短所を早期に見極めて適切な普及につなげることで、プラスチックの有用性が世界に再認識されればと思う。

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