新型コロナウイルスの感染拡大によるパラキシレン(PX)チェーンへの影響は薄れつつあるようだ。中国では、物流規制などによって高純度テレフタル酸(PTA)など誘導品設備の多くが稼働低下を余儀なくされたが、3月以降は改善に向かっている。一方、米中貿易摩擦をめぐっては昨年9月に対中関税の第4弾が発動され、衣料品も含まれているが、中国のポリエステルの需要に大きな影響は出ていないもよう。
 新型コロナウイルスの感染拡大にともない、世界最大のポリエステル生産国である中国では物流規制や移動規制が敷かれた。そのため、2月はPXの多くの誘導品設備が稼働停止や減産を余儀なくされたが、3月上旬以降は貿易や物流への影響は緩和に向かっているようだ。
 中国のポリエステル重合設備の稼働率は一時6割程度まで低下していたが、直近では8割程度まで回復している。最悪期は5割程度に落ち込んでいた繊維やポリエチレンテレフタレート(PET)の稼働率も7割を超えてきた。
 こうした川下の稼働率上昇が好感され、需要回復に対する期待感からPXとナフサの価格スプレッドは1トン当たり300ドル前後まで持ち直している。
 ただ、PTAやポリエステルの在庫水準がいぜん高いため、原料購買は引き続き慎重に行われている。また、新型コロナウイルスの感染は世界的に拡大し、影響が一段と広がっている。景気減速や消費減退の懸念が払拭できないなか、PXや誘導品の需要見通しは予断を許さない状況が続いている。
 一方、米中貿易摩擦における対中関税の第4弾が昨年9月1日に発動した。15・0%の関税が上乗せされ、衣料品も含まれるようになった。1月の米中合意によって、2月14日から7・5%に引き下げられた。昨年末時点では中国のポリエステル需要に大きな影響はみられなかったが、世界需要の6割を占める中国のポリエステル産業への影響を注視していく必要がある。

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