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今更聞けない化学産業の基本を分かりやすく解説:『基礎原料』編

化学工業では、ナフサや塩、石炭、鉱石などの原料が主に使用されます。しかし、日本は資源に乏しいため、これらの原料の多くを輸入に頼っています。原料価格は需要と供給によって決まり、国際市況が影響しています。日本の産業は輸送コストや製造コストが高く、低コストで製造できる国々との競争が厳しい状況にあります。しかし、日本は技術力の高さにより、プロセス制御や高付加価値誘導品の開発などで国際競争力を維持しています。


資源の不足は日本にとって大きな課題ですが、設備の安全を確保し、トラブルなく安定して生産できる体制を整えることも重要です。

今回は化学工業になくてはならない基礎原料について解説します。

基礎原料①:石油

石油(原油)は、日本では明治時代に言葉として使われるようになりました。古代には『日本書紀』に“燃ゆる水”、“燃ゆる土”という表現で登場しています。石油が現代の産業で重要な存在となったのは、1859年に米国のペンシルバニア州でエドウィン・ドレークが井戸を掘って見つけたことから始まります。当時、1日に35バーレル(約5.6kL)もの石油が出たそうです。

石油は「天然にできた燃える鉱物油とその製品」の総称です。日本や中国では「石油」と呼ばれ、英国や米国では「ペトロリアム」とも言います。この石油には原油と石油製品があり、前者を「原油」、後者を「石油製品」と呼びます。

化学的に見ると、石油は多くの液状炭化水素の混合物です。炭化水素は炭素と水素が結びついたもので、その割合によって種類が異なります。例えば、炭素1に水素4の割合で結びついたメタンがあります。この他にも、炭素2に水素6のエタン、炭素3に水素8のプロパン、炭素4に水素10のブタンなどがあります。炭素数が増えるにつれて、液体から固体になるものもあります。その中で、液体のものを狭義の「石油」と呼び、気体や固体のものを含めて「石油類」と呼びます。

近年ではロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う禁輸措置や世界経済の不透明さなどの影響を受けて、市場価格に影響が見られます。
常に最新情報を注視していることが求められます。

基礎原料②:ナフサ

ナフサは、原油の蒸留によって生じるガソリンの一部であり、一般的には「粗製ガソリン」とも呼ばれています。ナフサは、軽質ナフサ(沸点が約25〜100℃)と重質ナフサ(同約80〜200℃)に分類され、石油化学工業においてエチレンやプロピレンなどの基本原料として利用されます。日本では、国内で必要なナフサを生産する能力が不足しており、そのため海外からの輸入が必要です。

ナフサの価格は、原油価格と密接に関連しています。ロシアによるウクライナ侵攻などの世界的な情勢により高騰や下落が見られます。

市況を常に確認しておくことが重要です。

基礎原料③:工業用塩


工業用の塩に関して、世界の生産量は約2億8,000万トンあります。このうち、岩塩などを原料とした塩が3分の2を占め、残りの3分の1は海水を原料とした天日塩などです。ソーダ工業では、電解ソーダ工業とソーダ灰工業の2つがあります。どちらも塩を原料として使用しており、ほぼ100%の塩を輸入に依存しています。日本で消費される塩の量は約800万トンで、そのうちソーダ工業用が約75%を占めます。他の工業用が約23%で、家庭や飲食店で使用される食塩は全体のわずか2%しかありません。一方、国産塩は海水をイオン交換膜で濃縮し、蒸発・結晶化して生産されており、消費量の約12%が国内で生産されています。

工業塩の国内価格は、主にソーダ工業用を中心に考えられています。2022年に行われた価格交渉がほぼ決着し、2023年から2024年にかけて、現行価格に比べてCIFベースで1トン当たり15~30ドル値上がりする見通しです。これは、海上運賃の上昇や各種コストの増加、世界的な需給のタイト化などが影響しています。

基礎原料④:石炭

石炭は、古代ギリシャや中国で燃料として使われてきた化石燃料の一種です。18世紀の産業革命では蒸気機関の燃料として使われ、その後も化学原料としても利用されました。しかし、19世紀後半になると、石油が燃料としての需要を取って代わりました。しかし、20世紀後半の石油危機や中国での需要増加により、石炭の消費量は急増しました。

日本でも安価な化石燃料として利用されています。発電時の効率やCO₂の排出量には懸念がありましたが、技術の進歩により改善されています。また、世界中に広く分布しており、政情不安が価格高騰につながるリスクが少ないのも特徴です。発電コストの比較では、石炭は液化天然ガスや石油に比べて安価です。

石炭は鉄鋼の原料としても使われます。また、鉄鋼会社がコークスを作る過程で副産物として出るコールタールからさまざまな化学品が生産されています。

日本は長い間、世界最大の石炭輸入国でしたが、中国やインドなどの需要増加により、その地位は低下しています。従来、安定した供給を重視し、長期の固定価格で契約してきましたが、輸入国としての地位が低下する中、価格交渉の主導権を失いつつあります。

このコラムについて

このコラムは『ケミカルビジネス情報MAP2024』を要約したものを掲載しています。
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