今さら聞けない化学の基礎を分かりやすく解説:化学業界入門コラム

化学産業とは

化学産業は多岐にわたる製品や用途を持つ産業であり、その定義は単純ではありません。日本標準産業分類においては、化学工業、プラスチック製品製造業、ゴム製品製造業を合わせて「化学産業」として定義されます。この中には医薬品工業も含まれます。

化学産業は石油や天然ガス、石炭などを原料として、合成樹脂や合成繊維、合成ゴム、塗料、接着剤、化粧品などの幅広い製品を生み出しています。これらの製品は日常生活から自動車、エレクトロニクス、航空・宇宙、環境など、多岐にわたる分野で使用されています。化学産業は化学と密接な関係を持ち、基礎原料から最終製品までの製品が含まれています。

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製品は基礎化学品、汎用化学品、機能性化学品、消費製品の4つに区分されます。これらの製品は企業で原料・材料として使用されるものと、消費者が使用する製品に分けられます。

化学産業は消費者向けの最終製品よりも中間財(一次製品)が多く、産業内取引の割合が大きいです。1人当たりの付加価値生産性が非常に高く、研究開発型の基幹産業とされています。

2020年の年間の付加価値額は17兆円を超え、製造業全体の18.1%を占めます。就業者数は93万人超で、食料品や輸送用機械器具に次ぐ規模です。高水準の研究開発投資が行われ、製造業全体の21.0%に達しています。

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化学品管理の取り組み

化学品を適切に管理し、安全性を確保するためには、適切な規制や取り組みが必要です。化学品を扱う人々は常にその重要性を認識し、行動する必要があります。以下に、化学品管理に関する取り組みを紹介します。

化学品の規制

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化学品の取り扱いは法律によって厳しく規制されています。日本の化学品規制には、人が直接摂取する化学物質や環境への影響を考慮した法律が含まれます。また、消防法や船舶法、航空法など、化学品を危険物として取り扱うための規制も存在します。

化学物質審査規制法(化審法): 1973年に公布されたこの法律は、新規の化学物質の製造や輸入に際して、その性状や影響を事前に審査する制度を定めています。この法律に基づき、化学物質は以下のように分類され、製造や販売、使用が規制されます。

  • 第一種特定化学物質
  • 第二種特定化学物質
  • 優先評価化学物質
  • 監視化学物質
  • 一般化学物質
  • 新規化学物質

国際的な取り組み

近年、国際的な化学品管理の動きが進んでいます。環境と開発に関する行動計画である「アジェンダ21」や、「2020年までにすべての化学物質の健康や環境への影響を最小限に抑える」という目標が掲げられました。SAICM(国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ)などの戦略・行動計画が採択され、国内外での法規制の整備や見直しが進められています。

リスクベースの管理への転換

現在の化学品管理では、ハザードベースの管理からリスクベースの管理への転換が進んでいます。化学物質のハザードは高くても、曝露量を制御すればリスクは軽減されます。リスクベースの管理は製造から廃棄、リサイクルまでの全工程において重要です。

安全への取り組み

化学プラントの安全性は、稼働年数の増加や技術者の高齢化、国際競争の激化などの要因により、重要性が高まっています。これに伴い、事故が相次ぎ、サプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性が指摘されています。そのため、安全対策は企業にとって最優先の課題となっています。

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安全確保のためには、法令順守だけでなく、自主管理が欠かせません。その中心に位置するのがリスクマネジメントです。リスクを正しく把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。また、安全文化の醸成も重要であり、組織統率や学習伝承、作業管理などの要素を強化することが必要です。

安全文化の低下が懸念される中、安全工学グループが2016年に発足しました。このグループは、安全工学会、保安力向上センター、総合安全工学研究所、災害情報センター、リスクセンス研究会の連携により、広い視野での安全活動の創造を目指しています。また、安全工学の研究や普及、教育体系の構築、情報提供などを進めることで、効果的で効率的な保安活動を実現することが期待されています。

さらに、産業保安のスマート化が進展しています。IoTやビッグデータを活用した取り組みが広がり、異常検知や事前予測の精度が向上しています。経済産業省もこの動きに応じて、産業保安のスマート化を検討し、新たな認証事業所制度を導入しました。この制度を活用することで、機会損失を減らし生産性を向上させることが期待されます。

このコラムについて

このコラムは『ケミカルビジネス情報MAP2024』を要約したものを掲載しています。
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