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実は知らない?レアメタルの基本を解説

現代社会を支える重要な素材の一つとして、私たちの生活に深く関わっている「レアメタル」。スマートフォンや電気自動車(EV)、さらには再生可能エネルギー技術に至るまで、これらの小さな金属がなければ、私たちの日常生活や産業の多くは成り立ちません。しかし、レアメタルという言葉はよく耳にするようにはなったものの、実際それがどんなものなのか実はよく分かっていないという方が意外と多いのではないでしょうか。
本コラムでは、レアメタルについて知っておくべき基本的な情報を整理します。

レアメタルとは何か?


レアメタルとは、地球上に存在する金属の中で、産出量が少ない、または特定の地域でしか産出されない金属の総称です。ひとくちにレアメタルといっても、その中には数多くの種類の金属が含まれ、それらはすべて産業的に非常に重要な役割を果たしています。
日常生活でも使用することの多い鉄や銅、アルミニウムなどの金属は「ベースメタル」と呼ばれます。生産量、使用量がともに多く、私たちにも馴染みのある金属です。
それに対して産出量が少ない金属をレアメタルと呼ぶのです。

レアメタルの特徴

希少性が高い

レアメタルの名前の通り、これらの金属は地球上に存在する割合が非常に低く、採掘が可能な地域も限られています。

機能性に優れている

レアメタルは、独自の物理的および化学的特性を持ち、高性能な技術製品に欠かせない要素です。例えば、ネオジムは強力な永久磁石を作るために必要であり、これは風力タービンや EVのモーターに使用されます。

戦略的に重要

多くの先進技術に欠かせないため、供給の確保が国家戦略上非常に重要です。これにより、一部のレアメタルは「戦略的金属」とも呼ばれます。

地政学的リスクがある

レアメタルは特定の地域、特に中国など一部の国に集中して産出されており、地政学的なリスクが供給の安定性に影響を与える可能性があります。

レアメタルの種類

リチウム(Li)

ベリリウム(Be)

ホウ素(B)

希土類(レアアース)※

チタン(Ti)

バナジウム(V)

クロム(Cr)

マンガン(Mn)

コバルト(Co)

ニッケル(Ni)

ガリウム(Ga)

ゲルマニウム(Ge)

セレン(Se)

ルビジウム(Rb)

ストロンチウム(Sr)

ジルコニウム(Zr)

ニオブ(Nb)

モリブデン(Mo)

パラジウム(Pd)

インジウム(In)

アンチモン(Sb)

テルル(Te)

セシウム(Cs)

バリウム(Ba)

ハフニウム(Hf)

タンタル(Ta)

タングステン(W)

レニウム(Re)

白金(Pt)

タリウム(Tl)

ビスマス(Bi)



上記の※印、希土類は「レアアース」のことです。レアアースはレアメタルの一部で、下記の17種類の元素を総省したものです。


スカンジウム (Sc)

イットリウム (Y)

ランタン (La)

セリウム (Ce)

プラセオジム (Pr)

ネオジム (Nd)

プロメチウム (Pm)

サマリウム (Sm)

ユウロピウム (Eu)

ガドリニウム (Gd)

テルビウム (Tb)

ジスプロシウム (Dy)

ホルミウム (Ho)

エルビウム (Er)

ツリウム (Tm)

イッテルビウム (Yb)

ルテチウム (Lu) 


レアメタルにはこのように多くの種類が存在し、それぞれ特定の用途や目的に合わせて非常に重要な役割を果たしています。これらの金属は、その独自の特性によって、さまざまな産業領域で必要不可欠な素材として利用されています。

レアメタルの用途


レアメタルはその特殊な物理的および化学的特性から、様々なハイテク製品や産業プロセスに不可欠です。以下は、レアメタルが使用されている主な製品の例です 

スマートフォン

スマートフォンには、いくつかの重要なレアメタルが利用されています。バッテリーにはコバルトが使われており、これにより高いエネルギー密度が実現され、長時間の使用が可能になります。
タッチスクリーンにはインジウムが不可欠で、インジウムスズ酸化物(ITO)が透明導電膜として使用され、タッチ機能を効果的にサポートしています。
スマートフォンは今やとても身近な存在ですが、実は小さな機体の中にたくさんの種類のレアメタルを保有しているのです。

電気自動車(EV)

EVのバッテリーにリチウムやコバルト、ニッケルを含む、数種類のレアメタルが使われています。
電気自動車の普及にはレアメタルの存在は不可欠と言われています。

再生可能エネルギー技術

風力発電のタービンには、強力な永久磁石が使用されていますが、その中にネオジムなどのレアメタルが含まれています。また、太陽電池パネルにはインジウム、ガリウム、セレンなどが使用されることがあります。

航空宇宙機器

ジェットエンジンやスペースシャトルの構造材料には、耐高温性に優れたニッケル基超合金が使用されています。高圧・高温などの環境でも優れた性能を発揮できるタンタルや、チタンなどを含む多くのレアメタルが用いられています。

発光ダイオード(LED)

寿命が長く、省エネ照明器具として広く使用されている発光ダイオード(LED)には、ガリウムやインジウムといったレアメタルが使われています。
このように、レアメタルは産業はもちろん、人々の暮らしにも深く関わっています。

レアメタルが抱える問題

レアメタルは、その希少性や採掘・精錬の難しさから、いくつかの重要な問題を抱えています。

供給リスク

多くのレアメタルは特定の国や地域に偏在しており、特に中国は希土類元素の主要な供給国です。この地理的偏在は、政治的・経済的な緊張が供給に影響を及ぼす可能性を高めています。

価格の変動

レアメタルの市場は、不安定で価格が大きく変動することがあります。供給リスクや政治的な要因により、価格が急騰する場合があり、これが製造業者や最終製品のコストに直接影響を与えます。

リサイクルの難しさ

レアメタルは、多くの場合、少量で複雑な形態で製品に組み込まれているため、リサイクルが難しいという課題があります。効果的なリサイクル技術の開発が求められており、これが資源の持続可能な利用にとって重要です。
これらの問題は、レアメタルを持続可能に利用するための課題を提示しており、技術革新や政策的な対応が求められています。

まとめ

このように、レアメタルは今や私たちの生活になくてはならないものとなりました。
LEDやスマートフォンは、日々の生活に深く根付き、人々の日常を支えています。
一方で、その供給力やリサイクル技術にはまだまだ課題があり、今後の技術開発等の情報を注視していく必要があります。

化学工業日報 電子版

化学工業日報電子版では、レアメタルに関連する記事を多数掲載しています。
電子版は平日毎日更新。

『JX金属、車載LiBからリチウム90%以上回収』
https://chemicaldaily.com/archives/632401
 
『東レエンジ、LiB正極活物質 イオン液体で再生』
https://chemicaldaily.com/archives/603067

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