
オレフィンとは?身近に使われる素材の基本を解説
私たちの暮らしに欠かせない素材のひとつであるプラスチック。その中にもさまざまな種類があり、それぞれに異なる特性や用途があります。今回は、その中でも「ポリオレフィン系樹脂」とその原料である「オレフィン」について、基礎からわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.オレフィンとは?
- 2.ポリオレフィンとは?
- 3.ポリオレフィン樹脂の特徴
- 3.1.軽量で耐薬品性に優れる
- 3.2.水に強く、吸湿性がほぼゼロ
- 3.3.加熱にはある程度耐えるが、高耐熱材料ではない
- 3.4.リサイクル性と環境特性
- 3.5.繊維用途としての活用
- 3.6.発色性と成形性の良さ
- 4.ポリオレフィンの主な用途一覧
- 4.1.ポリエチレン(PE)
- 4.2.ポリプロピレン(PP)
- 4.3.まとめ:オレフィン系素材の今後に注目
- 5.化学工業日報 電子版
オレフィンとは?
オレフィンとは、炭素間に二重結合を持つ不飽和炭化水素(アルケン)の総称です。エチレンやプロピレンなどが代表的なオレフィンで、これらはプラスチックの原料として広く利用されています。これらのオレフィンを重合させることで作られるのが、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂です。これらは軽量で耐薬品性に優れ、私たちの身近な製品に多用されています。
ポリオレフィンとは?
ポリオレフィンとは、オレフィンを原料として重合反応によって作られる高分子化合物の総称であり、代表的なものとしてポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)があります。これらは、成形しやすくコストが低いことから、大量生産に適した樹脂材料として広く利用されています。
ポリオレフィンは炭素と水素のみで構成されており、燃焼時に有害なハロゲン系ガスを発生しないという点で、環境面でも一定の評価を受けています。また、絶縁性にも優れており、電気・電子機器にも活用されています。
ポリオレフィン樹脂の特徴
軽量で耐薬品性に優れる
ポリエチレンやポリプロピレンは非常に軽量で、酸やアルカリなど多くの化学薬品に対して高い耐性を示します。このため、家庭用品だけでなく、工業用の容器やパイプ類などにも広く用いられています。特に腐食性の強い液体の保管容器としての用途において、その特性が発揮されます。
水に強く、吸湿性がほぼゼロ
ポリオレフィン系樹脂は吸湿性がほとんどなく、水分を含みにくいため、湿気による性能劣化が起こりにくいという利点があります。そのため、食品包装材、防水シート、屋外家具や農業用資材など、湿度の高い環境下での使用にも適しています。加えて、優れた防水性が求められるテントやアウトドア用品でも重宝されています。
加熱にはある程度耐えるが、高耐熱材料ではない
ポリプロピレンは比較的高温に耐える素材として知られ、短時間であれば120〜130度程度まで使用可能です。食品容器などでは、電子レンジ加熱にも対応しています。しかし、プラスチック全体の中で特に耐熱性が高いとは言えず、高温環境での使用が常態化する製品にはエンジニアリングプラスチックなど、他の樹脂が選ばれるケースが多いです。
リサイクル性と環境特性
ポリオレフィンは、サーマルリサイクル(焼却熱の再利用)に適しており、燃焼時にも塩素系ガスを出さないため比較的安全性が高いとされています。一方、モノマーへのケミカルリサイクルは困難であり、環境配慮型の設計が求められる中で、完全な循環型材料とは言い切れないのが実情です。
近年では、マテリアルリサイクル(再成形)のために選別性や純度の高いポリオレフィン系材料の使用が推奨されるケースも増えています。
繊維用途としての活用
ポリプロピレンは繊維用途にも広く用いられています。軽量で柔軟性があり、毛玉ができにくく、吸水性が低いため、カーペット、ロープ、土木資材(ジオテキスタイル)などに適しています。アレルギーを起こしにくいことから、肌に触れる製品にも使われ、乳幼児用の衣類や寝具にも採用されています。
発色性と成形性の良さ
オレフィン系樹脂は、染料による着色はやや難しいものの、顔料(色粉)を均一に分散させることで鮮やかで多彩な色彩表現が可能です。このため、靴の中敷きや車の内装材など、多様な色合いが求められる製品で広く利用されています。
また、オレフィンは成形加工がしやすいという特長も持っています。熱可塑性樹脂として、比較的低い温度で成形が可能であり、複雑な形状や薄肉の製品も高精度で作りやすいため、デザイン性と機能性を両立した製品づくりに貢献しています。
ポリオレフィンの主な用途一覧
ポリエチレン(PE)
包装材料:ビニール袋、ラップフィルム、緩衝材
容器類:洗剤・化粧品ボトル、家庭用保存容器
パイプ・配管材:上下水道管、農業用ホース、ガス管
医療用途:滅菌袋、点滴用バッグ、チューブ類
ポリプロピレン(PP)
自動車部品:バンパー、インパネ、内装パネル
家庭用品:電子レンジ容器、収納ボックス、食器類
繊維製品:カーペット、不織布、医療用マスク
実験器具:遠心チューブ、ビーカー、注射器など
まとめ:オレフィン系素材の今後に注目
オレフィン類およびポリオレフィン系樹脂は、その優れた特性と加工のしやすさから、私たちの生活や産業に広く根付いています。今後は、環境対応やリサイクル性の強化などが課題となる中で、より高機能・高付加価値な用途が求められると予想されます。
日常生活の中で手にする製品が、どのような素材から作られているかを意識することは、素材理解を深める第一歩です。"PE" や "PP" といった表記を見つけたら、それがポリオレフィン系の製品であることを思い出してみてください。
化学工業日報 電子版
化学工業日報電子版では、オレフィンに関連する記事を多数掲載しています。
電子版は平日毎日更新。
『住友化学、廃プラ由来オレフィン製造技術 パイロット設備検討』
https://chemicaldaily.com/archives/532004
『インド特集 ポリオレフィン能力拡大拍車』
https://chemicaldaily.com/archives/622805
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