
GHSの話をしよう⑦ 国連GHS改訂第12版への動き
ごあいさつ
こんにちは。化学品管理子(かがくひんかんりこ)です。
2025年に国連GHS改訂第11版が発行されましたが、現在、国連GHS専門家小委員会では、次の改訂第12版に向けた検討が進められています。2026年7月8日から10日にかけて、ジュネーブで第49回 国連GHS専門家小委員会が開催されました。今回は、その報告書をもとに、次のGHSはどこへ向かっているのかを見てみたいと思います。
化学品管理子的には、国連GHSは改訂第6版でだいたい今の形になったと思っています。GHSが成熟するにつれ、単純に「新しい分類基準を作る」という段階から、既存の仕組みの中にある不整合を直す段階へ入っていることがわかります。
国連GHS小委員会とは
ざっくり、国連GHSの改訂について実質的な検討をしているところ、ととらえてもらったらよいです。会議体としては年に2回開催され、現在は2025年に発行された改訂第11版をもとに、次の改訂に向けた議論をしています。
国連GHS第12版に向け、既に小委員会で採択された事項
今回の会合では、次のGHS文書へ向けた改定案として、既に小委員会で採択されたものがあります。注意書きの修正などは、ぱっと見では地味な改訂です。でも、GHSが成熟してきたからこそ、実際に使ってみて出てきた不整合を一つずつ直す作業が増えている、と見ることもできます。
物理化学的危険性の同時分類と優先順位
爆発物、自己反応性物質、有機過酸化物、鈍性化爆発物について、複数の危険有害性クラスに該当し得る場合の関係が整理されました。
注意書きの整理
一部の注意書きの割当てが見直され、水と接触して可燃性ガスを発生する物質には新たな注意書きP343が追加されます。
皮膚感作性の細区分
OECD TG 442Bの改訂を受け、動物試験を用いた細区分基準が追加されます。これは日本からの提案ですね。
附属書11の対象追加
可燃性の蒸気-空気混合物、ガス-空気混合物を形成する物質・混合物が、附属書11の対象に加わります。
危険有害性クラスは増えるのか?
一方、まだ採択されていないものの、2026年12月会合に向けて議論が進んでいるテーマもあります。動物を使わない方法を試験に使用することや、生殖細胞変異原性の分類基準の見直し等です。
その中でも、今後のGHSを見る上で興味深いのが、現在のGHSにはない危険有害性をどこまで取り込むかという議論です。
OECDから、難分解性(Persistent)と移動性(Mobile)を持つ物質について検討結果が報告されました。EUではすでにPMT/vPvMという考え方が導入されています。これもそのうち国連GHSの新しい危険有害性クラスになるのかというと、どうもそう単純ではありません。 今回の報告では、難分解性や移動性という性質そのものが、必ずしも有害性を構成するわけではないと指摘されています。
つまり、「EUで新しい危険有害性クラスができた=国連GHSにもそのまま採用」ではないということです。てっきりEUのPMT/vPvMは自動的にGHSになるものだと思っていたのですが、ここは思っていた以上に慎重に議論されているようです。

このほか、内分泌かく乱、陸域環境への有害性、神経毒性、免疫毒性についても検討が進められています。
今のGHSにも、まだでこぼこがある
今回の報告書を読んでいると、GHSが成熟するにつれ、単純に「新しい分類基準を作る」という段階から、既存の仕組みの中にある不整合を直す段階へ入っていることがわかります。例えば、特定の引火性液体についてTDGとGHSの分類が合わない。混合物の急性毒性推定値(ATEmix)の計算に不整合の可能性がある。異なる物理的形態の成分を含む混合物では、急性吸入毒性の分類方法がはっきりしない等。
20年以上使われてきたGHSでも、こういうところはまだ残っています。
まとめ
GHS改訂というと、新しい分類区分や注意書きに目が行きがちです。しかし今回の報告書を読んでいると、これから重要になるのはむしろ、
- 「何を危険有害性と考えるのか」
- 「どの程度の証拠があれば分類する、あるいは分類しないと判断できるのか」
- 「同じ基準を実際の物質・混合物へ矛盾なく適用できるのか」
といったところなのだと思います。
次回の第50回GHS専門家小委員会は2026年12月に予定されています。引き続き、次のGHSがどこへ向かうのかを見ていきたいと思います。

