
GHSの話をしよう⑥ どくろのマークはどれくらい危ないのか
ごあいさつ
こんにちは。化学品管理子(かがくひんかんりこ)です。
夏休み明けの「GHSの話をしよう」は、少し軽い話をしましょう。今日は、GHSでもおなじみ、急性毒性で使われる、「どくろ」についてお話しします。
ちなみに、「どくろと交差した骨」のモチーフは海賊旗でもおなじみですが、もともとは「毒」だけでなく、広く「死」を表す記号でした。昔の漫画やアニメでは、毒薬と言えば怪しい色のびんにどくろマークがついていましたよね。いかにも毒!って感じで、ちょっと怖いですよね。

「どくろ」のマークの歴史
そもそも、この「どくろ」のマークですが、毒物を示す記号としては、GHSができるはるか前から使われていました。有害性を表すようになった経緯は定かではありませんが、米国では1853年、米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)が、毒物の容器に「POISON」の文字またはどくろの記号を目立つように表示することを決議しています。1860年代には、どくろと交差した骨を描いた毒物ラベルも増えていったのだそうです。
ということは、昔のアニメに出てきた毒薬びんも、まったく根拠のない表現ではなさそうです。
GHSのピクトグラム「どくろ」と急性毒性
さて、歴史的には1950年代の国連危険物輸送勧告でも毒性物質(クラス6(a)、現在のクラス6.1)にどくろのピクトグラムを割り当てていましたが、その後、GHSでも、どくろマークは急性毒性を表すピクトグラムとして採用されました。

GHSでは、ピクトグラム「どくろ」は急性毒性区分1・2・3に割り当てられます。急性毒性とは、1回または短時間のばく露によって生じる重篤な健康影響、ここでは主に致死性を評価するものです。急性毒性はばく露経路ごとに評価されます。以下では、経口摂取を例に、LD50(半数致死量)を使った分類とその量を見てみます。

表の数値は、それぞれの区分の境界となるLD50を体重60kgに単純換算したイメージです。実際の化学物質の人体への作用は色々あって、この量までなら大丈夫という話ではありませんので、その点は注意してください。また、この換算量を人が摂取すると半数が死亡する、という意味でもありません。
化学物質には、急性毒性以外にも有害性があります。GHSでは、皮膚腐食性・刺激性や眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性、呼吸器と皮膚への感作性、発がん性や生殖毒性など、急性毒性とは異なる有害性もあります。GHSでは、これらの有害性に対してはどくろとは別のピクトグラムを使います。
ピクトグラム「どくろ」と毒物及び劇物取締法
毒物及び劇物取締法では、急性毒性による健康被害が発生する恐れが高い物質を毒物又は劇物に指定し、規制を行います。毒物劇物の判定にはいくつかの基準がありますが、急性経口毒性では、LD50が50 mg/kg以下を毒物、50 mg/kgを超え300 mg/kg以下を劇物とするのが原則です。数値上は、GHSの急性毒性区分1・2が毒物、区分3が劇物の判定基準に対応します。
「どくろ」がなければ安全、というわけではない
ここまで見ると、「どくろが付いていない化学品なら、それほど危なくないのかな」と思うかもしれません。もちろん、そういう意味ではありません。「どくろ」は化学品の危険有害性全部を表すマークではなく、GHSが分類する多くの有害性のうち、急性毒性の一部を示している、という感じです。
GHSで表す有害性については、またの機会にお話ししてみたいと思います。
まとめ
さて、今日はGHSのピクトグラム「どくろ」についてお話ししてみました。GHSのどくろは、「なんとなくものすごく怖い毒」のマークではありません。急性毒性の区分1~3という、かなり具体的な意味を持ったピクトグラムです。一方で、発がん性など別の有害性を表しているわけでもありません。どくろを見たら怖がるだけではなく、「何の有害性を示しているのか」まで見てみてください。

