変化する日本の石油化学産業

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ナフサを原料としたエチレンやプロピレン、ブタジエン(オレフィン)から様々な誘導品を生産するのが、日本における従来型の石油化学産業でした。近年、この石油化学産業には大きな変化が起こっています。製造業の海外移転や景気低迷の影響で内需が減少する中、石化企業に原料を供給する石油精製企業の国内再編のほか、石化企業のエチレンセンター(ナフサなどからエチレンを生産する工場)の再編も本格化しています。

日本の石油化学業界が抱える課題

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現在、石油化学業界は新たな課題に直面しています。それがカーボンニュートラル(CN)です。この局面を迎え、再生可能エネルギーにも恵まれない日本は劣勢に立たされているように見えます。しかし、化石原料を低減・転換したり、二酸化炭素(CO2)の有効利用など新たなプロセスを開発すれば、老朽化した設備を刷新し、化学立国として再び競争力を取り戻す機会があるかもしれません。関係各社も基礎化学品事業を社会生活に欠かせないエッセンシャルインダストリーと位置づけ、次世代のあり方を模索しながら構造転換を急いでいます。

オレフィンをはじめとした主要石油化学製品は、世界的な情勢やいくつもの要因から常に市況が変化しています。
常に市況を注視することが求められます。
2023年の市況については、『ケミカルビジネス情報MAP2024』にて詳しく記載しています。

ではここで、一部の主要生産品目について、製法や用途をご紹介します。

オレフィンとその誘導体を開設

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【酸化エチレン(エチレンオキサイド;EO)】

エチレンを空気または酸素と接触反応させ酸化エチレンを得る酸素法が現在の製法の主流です。原料エチレンは高純度であることが必要で、エチレン100部から125部以上の酸化エチレンが得られます。この方法は三井化学、三菱ケミカル、丸善石油化学(自社技術もあり)がシェル社などから技術を導入し、日本触媒は自社技術により工業化しています。 〔用 途〕 有機合成原料(エチレングリコール,エタノールアミン,アルキルエーテル,エチレンカーボネートなど)、界面活性剤、有機合成顔料、くん蒸消毒、殺菌剤

【エチレングリコール(EG)】

エチレングリコールの原料は酸化エチレンと水です。製法には、酸化エチレン法、オキシラン(ハルコン)法、UCC法(研究開発中)があります。 〔用 途〕 ポリエステル繊維原料、不凍液、グリセリンの代用、溶剤(酢酸ビニル系樹脂)、耐寒潤滑油、有機合成(染料,香料,化粧品,ラッカー)、電解コンデンサー用ペースト、乾燥防止剤(にかわ)、医薬品、不凍ダイナマイト、界面活性剤、不飽和ポリエステル

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【塩化ビニルモノマー(VCM)】

塩化ビニルの原料となる高圧ガスです。塩化ビニルメーカーは二塩化エチレン(EDC)を購入、分解して塩ビモノマーと副生塩酸にし、その副生塩酸とアセチレンからまた塩ビモノマーを作ります。 〔用 途〕 ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体の合成

【酢酸ビニルモノマー(酢ビ:VAM)】

アセチレンまたはアセトアルデヒドを原料として製造されていましたが、しだいにエチレンを原料とする製法に取って代わられました。製造法としてICI法(液相法)、バイエル法(気相法)、ND法(気相法)がありますが、現在ではほとんどがバイエル法で、一部ND法が採用されています。気相法は、触媒としてパラジウム金属触媒、酢酸パラジウム触媒を用い、固定層(化学反応に使う粒子の層)で175~200℃、0.5~1MPaの圧力をかけた(大気圧は約0.1MPa)条件下、エチレン、酢酸、酸素の混合ガスを吹き込み反応させます。 〔用途〕 酢酸ビニル樹脂用モノマー、エチレン、スチレン、アクリレート、メタクリレートなどとの共重合用モノマー、ポリビニルアルコール、接着剤、エチレン・酢ビコポリマー、合成繊維、ガムベース

【アセトン】

製法として、塩化パラジウム-塩化銅系触媒溶液、空気(酸素)およびプロピレンを混合反応させるワッカー法、プロピレンとベンゼンを反応させるキュメン法、蒸留によって91%イソプロピルアルコール(IPA)を気化して反応器に送り脱水素反応させるIPA法などがあります。 〔用 途〕 メチルメタクリレート(MMA、アクリル樹脂の原料)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのアセトン系溶剤、ビスフェノールAの原料、酢酸繊維素、硝酸繊維素の溶剤、油脂、ワックス、ラッカー、ワニス、ゴム、ボンベ詰めのアセチレンなどの溶剤

※本コラムで紹介していない主要生産品目は、次回『今更聞けない化学産業の基本を分かりやすく解説:『石油化学』編①』にて紹介の予定です。

このコラムについて

このコラムは『ケミカルビジネス情報MAP2024』を要約したものを掲載しています。
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