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今更聞けない化学産業の基本を分かりやすく解説:『産業ガス』編


目次[非表示]

  1. 1.産業ガスについて詳しく解説
    1. 1.1.【酸素】
    2. 1.2.【窒素】
    3. 1.3.【アルゴン】
    4. 1.4.【炭酸ガス】
    5. 1.5.【ヘリウムガス】
    6. 1.6.【水素】
  2. 2.このコラムについて
  3. 3.書籍・セミナーをご活用ください

今さら聞けない化学産業の基本を分かりやすく解説、6本目の今回は産業ガスについて解説します。

産業ガスについて詳しく解説

代表的な産業ガスには、酸素、窒素、アルゴンなどがあります。これらのガスは、空気を分離して得られるため、エアセパレートガスとも呼ばれます。まず、空気を圧縮して約10℃まで冷却し、低温で固化する水分や二酸化炭素を吸着除去します。その後、熱交換器を使って空気をマイナス200℃近くまで冷却(液化)し、精留塔で各ガスの沸点の差を利用して分離精製します。

製鉄所などの大規模な需要家には、酸素をパイプラインで供給するオンサイトプラントが多く併設されています。また、小規模な需要家には、液化したガスを高圧タンクに詰めて出荷しています。このほか、製鉄所などで副生されるガスを回収して生産する炭酸ガスや、天然ガスから取り出すヘリウムなどもあります。

では、主な産業ガスについて詳しく見ていきましょう。

【酸素】

酸素は、燃焼を助ける力と強い酸化力が特徴です。鉄鋼業では、この性質を利用して炉での吹き込みに使い、銑鉄から炭素などの不純物を取り除きます。また、溶断・溶接やロケットの推進剤、化学工業での酸化反応にも利用されます。酸素の需要は化学工業と鉄鋼業が約60%を占め、医療用としても使用されています。

【窒素】


常温では化学反応を起こしにくいため、菓子類の袋に封入して酸化を防ぐのに使われたり、修理中の化学プラントに注入されたりします。また、液化するとマイナス196℃になり、冷凍食品の製造や超電導装置にも利用されます。この不活性という特性から、半導体製造に欠かせないガスであり、全需要の約20%がエレクトロニクス向けです。また、化学工業の原料としても使われ、全体の約40%を占めています。

【アルゴン】


アルゴンは空気中には0.9%しか含まれていません。高温高圧下でもまったく化学反応を起こさないため幅広い用途に使われ、半導体製造や鉄鋼などの雰囲気ガス、半導体基板のシリコンウエハーの製造、溶接、金属精錬などに利用されます。超高純度シリコン単結晶の製造や製鋼のほか、製錬などの高温高圧下での工程で酸化・窒化を嫌う場合や、窒素の不活性では不十分な場合にアルゴンが用いられます。

【炭酸ガス】

炭酸ガスは二酸化炭素のことを言い、アンモニア合成や製鉄所、重油脱硫用水素プラントなどで副産物として得られます。このガスはドライアイスや液化炭酸ガスとして、溶接や金属加工、冷却、炭酸飲料の製造、消火剤、殺虫剤の製造など、多くの用途に利用されています。

【ヘリウムガス】

ヘリウムガスは、化学的に不活性で、他の物質との化学反応を起こしません。空気よりも軽い特性を利用して、飛行船や気球の充填ガスとして広く知られています。

半導体や液晶パネルの製造では、CVD(化学気相成長法:半導体基板などに化学反応で薄い膜を作ること)工程後の冷却ガスとして主に使われており、また、リニアモーターカーやMRIの超電導磁石などにも利用されています。かつては光ファイバーの製造に多く用いられていましたが、需要の減少や生産の海外移転により、その用途は大きく減少しました。液体ヘリウムは主にMRIの用途で使用されており、その需要が増えていますが、成長は鈍化しています。

ヘリウムは天然ガス田から採取されますが、その供給源は限られており、米国、アルジェリア、ポーランド、ロシアなどごく一部の地域で生産されています。日本では全量を輸入に頼っています。

【水素】


無色、無味、無臭の気体で、最も軽いガスです。石油化学工業においては、誘導品を作る際に反応剤として使われます。アンモニア、塩酸などの原料として使用されるほか、産業ガス分野でもアルゴン精製用として利用されています。光ファイバー製造のための水素炎や半導体製造時のキャリアガスのほか、人工衛星打ち上げ用ロケットエンジンの燃料としても利用されています。今後は燃料電池自動車(FCV)向けの水素ステーションでの需要拡大が期待されます。

このコラムについて

このコラムは『ケミカルビジネス情報MAP2024』を要約したものを掲載しています。
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