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エチレンとは?石油化学を支える基本物質をやさしく解説

私たちの身の回りには、食品包装のフィルムやレジ袋、洗剤ボトル、プラスチック容器など、さまざまな化学製品があります。これらの多くは石油化学産業によって作られています。そして、その石油化学産業の出発点となる重要な物質の一つが「エチレン」です。

ポリエチレンという単語なら何度も耳にしたことがあるのではないでしょうか?

エチレンは、プラスチックや合成繊維など多くの化学製品の原料となる基本的な化学物質で、石油化学では「基礎化学品」と呼ばれます。生産量が化学産業の規模を示す指標になるほど重要な存在であり、現代社会の素材産業を支える中心的な物質でもあります。

この記事では、エチレンとはどのような物質なのか、どのように作られ、どのような製品に利用されているのかを解説します。

エチレンとはどんな物質か

エチレンは炭素と水素からなる炭化水素の一種です。

分子式は「C2H4」

ふたつの炭素原子が二重結合で結びついた構造を持つアルケンに分類され、常温では無色の可燃性ガスとして存在します。

この分子構造には重要な特徴があります。炭素同士の二重結合は反応しやすく、他の分子と結びつきやすい性質を持っています。そのためエチレンはさまざまな化学反応を起こしやすく、多くの化学製品を作る出発物質として利用されています。

石油化学産業では、この反応性の高さを利用して、エチレンをさまざまな化学物質へと変換し、活用しています。

原油からエチレンができるまで

工業的に使われるエチレンの多くは、石油から作られます。

まず原油は製油所で蒸留され、ガソリンや灯油、軽油などの元となるさまざまな成分に分離されます。この工程で得られる成分の一つが「ナフサ」です(ナフサについての解説コラムはこちら)。ナフサは石油化学製品の原料として重要な役割を持つ石油成分です。

エチレンは、このナフサを原料として製造されます。ナフサを水蒸気とともに非常に高い温度で加熱すると、分子が分解されてさまざまな炭化水素が生まれます。この工程はスチームクラッキングまたはナフサ分解と呼ばれ、温度は800度以上に達します。

この高温分解によって、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの基礎化学品を生成するのです。その中でもエチレンは最も重要な生成物の一つであり、多くの化学製品の原料として使われます。

エチレンからプラスチックができる仕組み

エチレンの代表的な用途が、ポリエチレンというプラスチックの原料になることです。

ポリエチレンという名前は、「poly(たくさん)」と「ethylene(エチレン)」からできています。つまり、エチレン分子が多数つながってできた物質という意味です。

エチレン分子は、重合と呼ばれる反応によって互いに結びつきます。この反応によって分子が鎖のように連なった構造を持つ固体材料が形成されます。こうして生まれるのがポリエチレンです。

工業的にはエチレンを反応装置に送り込み、触媒を用いて重合反応を進めます。生成したポリエチレンは粒状の樹脂として出荷され、プラスチック製品の原料として利用されます。

ポリエチレンは世界で最も多く生産されているプラスチックの一つです。軽くて丈夫で加工しやすく、耐久性にも優れているため、さまざまな用途に利用されています。

代表的な製品には、食品包装フィルム、レジ袋、プラスチック容器、洗剤ボトルなどがあります。さらに工業分野では、パイプや電線被覆材などにも利用されています。

石油化学コンビナートでは、エチレンを生産する装置と、ポリエチレンなどの誘導製品を作る工場がパイプラインでつながっており、効率的な大量生産が行われています。

植物もエチレンを作っている

エチレンは工業原料として大量生産されていますが、植物の体内でも作られる物質です。植物にとってエチレンは、成長や成熟を調節するホルモンとして働きます。

例えば果実が熟す過程では、植物体内でエチレンが生成されます。このガスが周囲の果実にも作用することで、熟成が進むことが知られています。バナナやリンゴなどの果物が追熟する現象も、この働きによるものです。

このように、エチレンは植物の生命活動にも関わる重要な物質ですが、植物が生成する量はごく微量であり、工業用途で利用されるエチレンは主に石油化学の工程で生産されています。

エチレンは化学産業の出発点

エチレンは単純な分子構造の物質ですが、その用途は非常に幅広いものです。

ポリエチレンのほかにも、エチレングリコール、塩化ビニル、エチレンオキシドなど、多くの化学物質の原料になります。これらの物質はプラスチック、合成繊維、洗剤、建築資材などの製造に使われています。

こうした理由から、エチレンは石油化学産業の中心的な基礎原料として位置づけられています。エチレンから広がる化学製品のネットワークは、現代社会の素材産業を支える大きな基盤になっています。

まとめ:エチレンは現代生活を支える基本素材

エチレンは炭素と水素からなるシンプルな分子ですが、その化学的性質によって多くの物質へと変化することができる重要な化学物質です。

原油から得られるナフサを高温で分解することで生産され、ポリエチレンをはじめとする多くの化学製品の原料として利用されています。日常生活の中で使われているプラスチック製品の多くは、このエチレンを出発点として生まれています。

さらにエチレンは植物の体内でも生成され、果実の成熟を調節するホルモンとして働きます。化学工業と生物の両方に関わる物質でもあります。

普段の生活では意識することの少ない物質ですが、エチレンは現代社会を支える素材産業の基盤となる存在です。その小さな分子が、多くの製品と技術の出発点になっているのです。

化学工業日報電子版

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