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触媒とは?化学反応を助ける縁の下の力持ちをやさしく解説

「触媒」という言葉を聞いたことはありますか?化学の授業で一度は出てきたけれど、もうすっかり忘れてしまった・・・。そんな方も多いんじゃないでしょうか。

でも実は、触媒は私たちの体の中でも、身の回りの製品の中でも、ごく普通に活躍している物質なんです。知らず知らずのうちに、毎日お世話になっているといっても過言ではありません。この記事では、触媒がどんなものかを、身近な例を使ってわかりやすくご紹介します。

触媒とは何か

触媒をひと言で表すなら、「化学反応を手助けするけれど、自分自身は変わらない物質」です。

化学反応とは、ある物質が別の物質へと変わる現象のこと。触媒はその変化をぐっと速くしたり、普通では起こりにくい反応をスムーズにしたりする役割を担います。大切なのは、反応が終わっても触媒自体はちゃんと元のまま残るということ。使っても減らないので、何度でも繰り返しはたらけるんです。

ちなみに「触媒」の「媒」には「仲立ちをする」という意味があって、仲人を指す「媒酌人」と同じ字なんですね。物質と物質の間に入って変化をそっと後押しする——まさにその名の通りの存在です。

唾液で考えてみると、すごくわかりやすい

触媒のはたらきをイメージするなら、食事の場面がいちばんわかりやすいかもしれません。

ご飯をよくよく噛んでいると、だんだん甘みを感じてきた経験はありませんか?あれ、実は唾液に含まれる消化酵素「アミラーゼ」が、ご飯の主成分であるデンプンを糖に分解しているんです。

このアミラーゼは、デンプンを糖へと変える反応をしっかり助けてくれますが、自分自身は変わりません。一度はたらいたあとも、また次のデンプンにすぐ作用できます。これがまさに触媒のはたらきそのもの。体の中でこのように活躍する酵素は「生体触媒」とも呼ばれていて、触媒の仲間のひとつです。

なぜ触媒があると反応が速くなるの?

物質が化学反応を起こすには、一時的に不安定な状態を経由しなければなりません。その状態に達するために必要なエネルギーを「活性化エネルギー」と呼びます。

触媒があると、この活性化エネルギーが低くなります。「反応を始めるのに必要なひと押し」が小さくて済む、といったイメージです。たどり着くゴールは変わらないのに、触媒があるだけでずっとラクに進められるようになる——これが反応が速くなる理由なんですね。

触媒には2種類ある

触媒は大きく「均一系触媒」と「不均一系触媒」の2タイプに分けられます。

均一系触媒は、液体に溶けて反応を助けるタイプ。医薬品や農薬など、精密な合成が必要な場面で活躍しています。先ほど紹介したアミラーゼのような消化酵素も、体内の液体の中ではたらくという意味では、このタイプに近い存在です。

一方、不均一系触媒は固体のまま使うタイプ。生成物と分離しやすく繰り返し使えるので、大量生産が必要な工業の現場で特に重宝されています。

石油精製から自動車まで、産業を支える触媒

触媒がフル活躍している場所のひとつが、石油精製の現場です。

原油に含まれる硫黄成分を取り除いたり、ガソリンの品質を高めたりといった工程では、それぞれに適した触媒が使われています。触媒なしには現代の石油精製は成り立たないほど、なくてはならない存在なんです。

自動車にも、触媒は密かに活躍しています。排気管の中には浄化装置が組み込まれていて、排気ガスに含まれる有害物質を無害な物質へと変える触媒が使われているんです。白金などの貴金属がその役割を担っていて、厳しい排気ガス規制をクリアするための陰の立役者になっています。

触媒と日本、そしてこれから

触媒の研究は、日本とゆかりの深い分野でもあります。野依良治博士(2001 年)、 根岸英一博士・鈴木章博士(2010 年)と、これまでに 3 人の日本人研究者がノーベ ル化学賞を受賞しており、日本の化学を代表する領域のひとつといえます。 そして今後も、触媒は社会の変化の最前線に立ち続けるでしょう。水素のバリューチ ェーン構築、CO₂ と水素から天然ガス成分をつくるメタネーション、CO₂ 回収・利用 (CCUS)——カーボンニュートラルを実現する技術の多くは、触媒なしには成り立 ちません。

まとめ

触媒は、自分自身は変わらずに化学反応を助け続ける、いわば縁の下の力持ちです。私たちの体の中では消化酵素として食事を助け、産業の現場では石油精製や排気ガス浄化に欠かせない役割を果たしています。

普段はあまり意識することのない存在ですが、触媒なしでは成り立たないものが、実は身の回りにたくさんあるのですね。