
GHSの話をしよう④ SDSにはなんでも詳しく書けばいいのか
ごあいさつ
こんにちは。化学品管理子(かがくひんかんりこ)です。
さて、今日の「GHSの話をしよう」は、少し身近にSDSの話をしたいと思います。SDSは、化学工業に関わる皆様にとって、日常的に目にする書類ですね。
日本では、労働安全衛生法においてSDSによる情報提供制度は以前から設けられていましたが、2006年にはこれにGHSが導入されました。この頃から、危険有害性を分類しラベルやSDSで伝えるという考え方が、より身近なものになっていきました。
SDSに書けば書くほど親切、とは限らない
2000年代から化学物質を取り扱っていた方の中には、GHSの導入にあたり、今まで普通に扱っていた化学品に健康有害性のピクトグラムが付いて驚いたり、もらったSDSを見ても「危険有害性の要約」といっても1ページには収まらないし、そもそもページ数も何倍も多くなっているし…と驚いたりがっかりした経験のある方もいるのではないでしょうか。
GHSに対応したSDSでは、応急措置、火災時の措置、漏出時の措置、取扱い及び保管上の注意、ばく露防止及び保護措置など、化学品を安全に取り扱うための情報を項目ごとに記載します。もともと書くべき項目が多い文書なのです。そこにさらに、GHS分類の根拠とした試験データや参考情報を何でも詳しく書き込んでいくと、SDSはとても分厚い文書になってしまいます。
情報が多いこと自体は、悪いことではありません。けれども、SDSは読まれて、使われて、初めて意味を持つ文書です。必要な情報がどこにあるのか分からないほど分厚いSDSは、必ずしも親切なSDSとはいえないのです。
なお、GHSでは、特に混合物においてその構成成分の既知の情報を使って危険有害性分類を行うと、私たちの実感よりも強い有害性区分に分類されがちです。この話はまた別の機会にします。

SDSは「どう危ないか」「こうしたら安全だ」を伝える文書
さて、ここでSDSの目的に立ち返ってみましょう。SDS(Safety Data Sheet)は安全データシートで、化学品の危険有害性とその安全な取り扱いについての情報伝達を目的としています。
つまり、SDS を読んだ人が受け取らなければいけない情報は、極端に言えば「どう危ないか」「どうしたら安全に取り扱えるのか」です。
取り扱いとひとことで言っても、その内容は様々です。その化学品を使って製品を作る人、自分の業務として作業で使う人、輸送する人、もしかしたら、火災の現場に入って消火作業にあたったり、環境中に漏洩した化学品を回収したりする人もいるかもしれません。
SDSには、こうした様々な場面を想定して、応急措置、火災時の措置、漏出時の措置、取扱い及び保管上の注意、ばく露防止及び保護措置などの項目が設けられています。化学品を安全に取り扱うための情報を、使う場面ごとに分けて伝える文書なのです。

SDSで伝えなければならないこと
SDSの記載事項にはJIS(日本産業規格)で定めたものや、法令で要求される事項もあります。ですから、「どう危ないか」「どうしたら安全に取り扱えるのか」だけ書けばいいということではありません。
それでも、SDSは場面ごとに必要な情報が見つかるように書いてある文書であるということはぜひ覚えておいてください。読む人も、使う場面もひとつではありません。製造現場で使う人、研究開発で少量を扱う人、倉庫から運び出す人、輸送する人、万一の漏洩や火災に対応する人。場面ごとに読む人が違うということです。それぞれの人が、必要な情報に迷わずたどり着けることが大切です。
もちろん、SDSを作成する人がすべての使用場面を実際に経験しているとは限りません。だからこそ、決められた項目に沿って記載することに意味があります。SDSの形式は、単なる書式ではなく、情報を伝えるための道具でもあるのですよ。
まとめ- SDSは「読まれて」「使われて」初めて意味を持つ文書
さて、今日はSDSの目的について再確認しました。
SDSは、情報をたくさん詰め込むための文書ではありません。化学品の危険有害性と、安全に取り扱うための情報を、必要な人が見てわかるように記載する文書です。
もちろん、情報が少なければよいという話でもありません。必要な情報が抜けていては困りますし、根拠となる情報を確認できることも大切です。ただ、詳しく書くことそのものが目的になると、かえって大事な情報が見えにくくなることがあります。
SDSは、読まれて、使われて、初めて意味を持つ文書です。
次回は、GHSの話に戻って、「GHS分類の限界」についてお話ししてみたいと思います。今日の話では、GHSの導入によってSDSがより詳しくなったことを書きましたが、その背景には、GHS分類という仕組みの特徴があります。次回はそこを少しのぞいてみましょう。


