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CNF(セルロースナノファイバー)とは?植物から生まれた次世代素材をやさしく解説

「CNF」という言葉、最近どこかで目にしたことはありませんか?化学や素材の専門家でなければ、「なんとなく聞いたことはあるけれど…」という方も多いと思います。でも実は、CNFはすでに皆さんの身の回りにも少しずつ登場していて、これからの社会を大きく変えるかもしれない素材として、日本でも世界でも大きな注目を集めています。

この記事では、CNFとは何か、どんな特性があって、どんなところで使われているのかを、できるだけわかりやすくご紹介します。

CNFとはどんな素材?

CNFとは、「セルロースナノファイバー(Cellulose Nano Fiber)」の略称です。木材などの植物に含まれる「セルロース」という成分を、ナノメートル(10億分の1メートル)レベルまで極限に細かくほぐした、繊維状の素材のことをいいます。

わかりやすく言うと、木や草などの植物を構成する繊維を、目に見えないほど極限まで細かくしたもの、というイメージです。1本の繊維の太さは320ナノメートル程度で、人間の髪の毛の太さと比べると、その約5,00010,000分の1しかありません。目で見ることはもちろん、一般的な顕微鏡でさえも確認できないほどの細さです。

原料となるセルロースは、木や草、竹など、地球上のあらゆる植物に含まれています。砂漠や極地を除けば、ほぼどこにでも存在する豊富な天然資源です。石油のように掘り尽くされる心配がなく、育てれば繰り返し使えるという点でも、持続可能な社会にぴったりの素材といえます。

「鋼鉄の5倍の強度」ってどういうこと?

CNFが世界から注目される最大の理由は、その特性のすごさにあります。環境省やNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が示すデータによると、CNFは「鋼鉄の5分の1の軽さで、5倍以上の強度」を持つとされています。

植物からできているのに、あの頑丈な鋼鉄よりも強い——にわかには信じがたいかもしれませんが、これがCNFの実力です。しかも、鋼鉄と比べてはるかに軽いため、製品の軽量化にも大きく貢献できます。

強さ・軽さのほかにも、CNFにはさまざまな特性があります。

  • 熱で膨張・収縮しにくい:温度が変化しても形が安定しています(寸法安定性)。精密な部品への応用に適しています。

  • 透明なフィルムにできる:CNFを薄く広げると透明なシートになります。ディスプレイや光学材料などへの応用が期待されています。

  • 保水性が高く、粘度を保ちやすい:水分を保持する力が強く、液体にとろみを与える性質があります。この特性は、食品や化粧品に活かされています。

  • 植物由来で環境にやさしい:CO2固定化に資する木質由来素材として、カーボンニュートラル実現への寄与が期待されます

CNFはどうやって作るの?

CNFの製造工程は、木材からスタートします。まず木材をチップ状に細かく砕き、化学処理を経て「パルプ」という繊維状の素材にします。ここまでの工程は、私たちが普段使っている紙を作るプロセスとほぼ同じです。

次のステップがCNFならではです。このパルプをさらにナノスケールまで細かくほぐしていきます。機械的に力を加えてすり潰す方法や、化学処理によって繊維の結合をほぐす方法など、いくつかのアプローチがあります。

そのなかで特に注目されているのが、京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授(当時・現在は特任教授)が中心となって開発した「京都プロセス」です。木材に含まれる「リグニン」という接着成分をあえて少し残したまま、樹脂にセルロースを混ぜ込む過程で一部をナノサイズに解繊する手法として、世界に先駆けて開発されました。耐熱性が高く、樹脂への分散がしやすく、製造コストの面でも優れているとして、国内外から高い評価を受けています。

原料となる植物も、木材だけに限りません。竹や麦わら、ジュースの搾りかす、コーヒーのかすといった、これまで廃棄されてきた植物残渣(バイオマス)も活用できます。廃棄物削減と新素材の製造を同時に実現できる点も、CNFの大きな魅力です。

身の回りのどんなところに使われている?

CNFはすでに、私たちの生活のさまざまな場面で実用化が始まっています。

化粧品・日用品

シャンプーやコンディショナー、保湿クリーム、サンケア製品などに、CNFが増粘剤・乳化安定剤として配合されています。天然素材であるため肌への親和性が高く、植物由来の自然派コスメ向け原料としての需要も高まっています。

食品

CNFは植物由来のセルロースを原料としており、食品用添加剤としての活用も進んでいます。和菓子などにもCNFが使用され、CNFの保水効果によってしっとり・ふっくらした食感を与えることなどに役立てられています。

自動車・モビリティ

環境省が推進した「NCVプロジェクト(Nano Cellulose Vehicle)」では、CNFを使った各種部品を搭載した自動車で、燃費改善効果が実証されました。ヤマハ発動機では水上バイクのエンジンカバーにCNF複合樹脂を採用するなど、モビリティ分野での実用化も着実に広がっています。軽量化によってCO₂排出量を削減できる点は、脱炭素化が求められる自動車業界にとって大きなメリットです。

家電・建材

パナソニックが家電部品への搭載を研究するなど、住宅や家電の分野でも活用が検討されています。部品を軽量化することで、製品全体のエネルギー効率の向上にもつながります。

日本が世界をリード——CNFと政府の取り組み

CNF研究において、日本は世界の最先端を走っています。

京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授(当時・現在は特任教授)らの研究グループは、CNF研究の草分け的存在として国際的に高く評価されています。また、日本製紙グループ・大王製紙・王子ホールディングスといった製紙大手が商業生産を牽引しており、静岡県をはじめとする自治体も産業振興の観点からCNFの普及を後押ししています。

NEDO2020年度から「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」事業を推進し、製造コストの削減や用途開発を国を挙げて加速させてきました。

将来的には、CNF関連市場は年間数兆円規模に成長するとも見込まれています(NEDO・京都大学の報告書より)。今後さらに製造コストが下がることで、自動車の外装パネルや航空機の内装部材、住宅建材など、より大型・高機能な分野への普及も期待されています。

まとめ

CNF(セルロースナノファイバー)は、木や草などの植物を原料に、ナノスケールまで微細化した次世代素材です。鋼鉄を超える強度を持ちながらも重さは5分の1と軽く、さらに植物由来でCO₂削減にも貢献できるという、現代社会のニーズにぴたりと応える素材です。

化粧品や食品、自動車の部品にいたるまで、すでに身の回りに少しずつ広がりつつあるCNF。「脱炭素」や「循環経済」が求められる時代に、日本が世界に誇るこの次世代素材が、私たちの暮らしをどのように変えていくのか——今後の動きにぜひ注目してみてください。

化学工業日報電子版

化学工業日報電子版では、CNFに関連する記事を多数掲載しています。

電子版は平日毎日更新。

第一工業製薬、CNFが氷の結晶の成分局在化を抑制

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創立90周年記念特集 第1部 関西・中部企業、事業ポートフォリオ変革へ

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