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GHSの話をしよう⑤ ハザードコミュニケーションってなんだろう

ごあいさつ

 こんにちは。化学品管理子(かがくひんかんりこ)です。

 今日の「GHSの話をしよう」は、ちょっと抽象的な話をします。GHSで目指しているハザードコミュニケーションってなんだろう、という話です。「ハザード管理からリスク管理へ」という考え方が、2000年頃からよく聞かれるようになりました。ところが、その流れの中で登場したGHSは、リスクコミュニケーションではなく、ハザードコミュニケーションのためのツールなんですよね。

ハザードコミュニケーションとリスクコミュニケーションの違い

 ここでは、ハザードコミュニケーションを「どのような危険性があるのかを伝えること」とします。

 これに対して、リスクコミュニケーションとは「その危険によって、具体的にどのような結果が生じうるかを伝え、必要な行動を促すこと」とします。

 GHSの話をする前に、もっと身近な話をします。

 天気予報です。例えば、「明日の降水確率は80%です」と伝えられた時、登山に出掛ける予定の人はその情報に自分の経験や装備、行程等を加えて、「今回は中止した方が良いかな」と判断します。これが、ハザードコミュニケーション寄りの例です。

 一方、例えば熱中症警戒アラートにおいては「熱中症に警戒してください」「屋外での作業は控えてください」といった具体的な行動まで明確に伝えられます。この情報を受けた工場では、作業場所や休憩場所の温度管理、水分補給、場合によっては暑い時間帯の屋外作業の中止など、必要な対応を取ります。これが、リスクコミュニケーション寄りの例です。

 もちろん、ハザードコミュニケーションとリスクコミュニケーションはいつもきれいにわかれているわけではなく、実際の情報伝達はその目的や状況に応じて両者の間を連続的に移り変わると考える方がよいでしょう。

GHSとハザードコミュニケーション

 さて、では改めてGHSとSDSについて見てみましょう。

 GHSは、化学品の分類と表示に関する世界調和システムであり、ハザードコミュニケーションのためのツールです。GHS分類は、リスクアセスメントに必要な情報のひとつですが、実際の化学品管理では、GHS分類によって示されたハザードに、使用量や使用方法、ばく露の可能性、ばく露防止措置などを加えてリスクを評価し、必要な対策を決めます。

SDSとハザードコミュニケーション

 一方、SDSは少し性格が複雑です。前回、SDSは「どう危ないか」だけでなく「どのように取り扱えば安全か」を伝える文書であるという話をしました。SDSには安全な取扱方法、保護具、応急措置、火災時の措置、漏出時の措置など、具体的な行動につながる情報も多く含まれています。そのため、SDSはハザードコミュニケーションのための文書でありながら、リスクコミュニケーションに近い要素も含んでいると考えることができます。

 ただし、SDSは個々の職場における使用量、使用方法、設備等まで評価した文書ではありません。具体的な使用条件に応じたリスク判断は、SDSを受け取った事業者が行う必要があります。

 GHS分類は、危険有害性の種類や区分を示します。その情報を、実際の使用条件と結び付けて考えるのは、使用者側の役割です。

SDSに引っ張られるGHS分類

 GHS分類はハザード情報です。

 しかし、それが記載されるSDSには危険有害性だけでなく、安全な取り扱いのための具体的な行動に関する情報も記載されます。そのため、SDSを読む側から見ると、そこに記載されたGHS分類まで、特定の使用場面におけるリスク判断の結果であるかのように受け取られることがあります。例えば、「発がん性区分1だから使用できない」「急性毒性区分3だから特別な設備が必要だ」といった受け止め方です。

 もちろん、GHS分類を無視することは望ましくありません。しかしまた、分類だけでは、実際にどの程度ばく露するのか、どのような対策が必要なのかまでは決まりません。そこは使用条件を踏まえ、使用者が判断する部分です。

まとめ – GHS分類は答えではなく、考える入り口

 GHSは、化学品の危険有害性を共通の方法で整理し、伝えるための仕組みです。けれども、伝えられた情報がどのように受け取られ、どのような行動につながるかまでを、GHSだけで決めることはできません。

 GHSで伝えられた危険有害性情報を、実際の使用条件にどう結び付けるかは、受け取った側で考えていくことになります。

化学品管理子
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