海外企業による新型コロナウイルスワクチンの開発が最終段階を迎えている。英アストラゼネカ(AZ)は、同社が開発しているワクチンの第3相臨床試験(P3)で、平均70%の有効率を確認した。各国で承認申請の準備を始める。P3で有効率95%を記録した米ファイザーは米国で緊急使用許可(EUA)を申請。日本などでも申請に向けた資料提出を開始した。

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 AZは英国とブラジルで行ったP3の中間結果を発表。合計2万3000例超を組み入れた治験で、髄膜炎菌ワクチンを接種した場合と比較した。1カ月以上の間隔で2回接種し、(1)最初に半量、2回目は全量を接種(2)2回とも全量接種-の2種類の用量グループに分けて行った。接種後に感染した131例を解析した結果、両グループを平均した予防効果の有効率は70%。半量+全量群((1))に限ると90%、全量+全量群((2))は62%だった。

 感染例の内訳は明らかにしていないが、コロナワクチン群で重症化した症例はなかった。ワクチンに起因する重篤な副反応は報告されず、安全性の問題もないと評価された。

 AZは世界各国で承認申請に向けた準備を始める。欧州では正式な申請前から審査を進めていく「ローリング審査」を10月に開始。日本でも海外治験の結果を当局と共有しつつ、国内P1/2の結果を待って申請手続きに入る見込み。

 AZのコロナワクチンは、チンパンジー由来のアデノウイルスにコロナウイルスの抗原遺伝子を組み込んだワクチン。ウイルスベクターワクチンとしては、最終段階の大規模治験で初めて有効性が確認された。来年中に全世界で30億回分準備する計画で、日本向けにも1億2000万回分の供給で政府と合意している。通常の冷蔵条件(2~8度C)で6カ月以上保存でき、既存のサプライチェーンで取り扱い可能という。

 すでに最終治験で高い有効性が発表されたコロナワクチンでは、ファイザーが申請手続きに着手。米国で20日にEUA申請し、日本や欧州、カナダなどでも申請に向けた資料提出を開始。日本では国内治験の結果と併せて申請手続きに入る。同じく最終治験で95%近い有効率があった米モデルナも近くEUA申請する予定。

 米国では12月10日前後に第1弾となるコロナワクチンの承認審議がされる見込み。EUAが認められれば、日本での実用化も後押ししそうだ。

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