大阪大学は17日、ウイルスより大きな直径を持つ貫通孔「ナノポア」と人工知能(AI)を融合し、5分で唾液から新型コロナウイルスを検出することに成功したと発表した。イオン電流が流れる、窒化シリコン膜上の微細なナノポアに、ウイルス1個が通過する際に生じる電気的信号を計測。波形をAIで識別する。感度90%、特異度96%という高い精度を実現した。

 阪大産業科学研究所の谷口正輝教授らの研究成果で17日、英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」電子版に掲載された。日本医療研究開発機構(AMED)の支援の下、アイポア(東京都渋谷区)やアドバンテストなどが協力した。

 このAIナノポア技術で、培養された重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスなどに加え、今回、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスの高精度な識別を実証。今春の選抜高校野球で大規模なフィールドテストも実施し、PCR検査との一致率100%も確認した。

 RNA抽出などを経ず、ナノポアセンサーモジュールに直接、試料を注入。小型の計測装置が信号を増幅、デジタル化する。PCR検査より迅速性に優れ、臨床現場での即時診断や、スクリーニング検査への応用が期待できる。AIに学習させることで、新規の病原体検出法も迅速に構築可能。今後、起こり得る新たな感染症への素早い対応にも貢献できるとしている。

 オンラインで会見した谷口教授は「同技術に関わるシステムを12月をめどに、医療機器として申請したい。量産化することで、検査費用数千円程度を目指す」と話した。

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