富士フイルムは15日、傘下の富士フイルム富山化学を通じて新型コロナウイルス感染症向けに抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)の生産体制を拡大、増産を開始したと発表した。3月上旬時点で月4万人分強だった生産能力を段階的に増やし、7月には約2・5倍の10万人分、9月には約7倍の30万人分に引き上げる。設備増強や国内外企業との連携を通じ、日本政府の備蓄増や海外からの提供要請に応える。

 グループ会社の富士フイルム和光純薬では、愛知工場(愛知県豊橋市)に約1億円を投じて設備を改造。アビガンに必要な医薬品中間体の生産能力を増強し、国内外の原料メーカーや各生産工程の協力会社と連携し増産を推進する。

 さらに富士フイルム和光純薬子会社の富士フイルムワコーケミカル・広野工場(福島県広野町)でアビガン原薬製造設備も増強し生産能力のさらなる拡大を図る。投資額は約10億円。10月以降の稼働を見据え、さらに10万人分の上積みを視野に入れる。

 国内で抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得しているアビガンは、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐ作用機序を有する。

 こうしたメカニズムの特徴からインフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスの新型コロナウイルスに対しても同様の効果が期待され、すでに臨床研究や観察研究の枠組みで新型コロナウイルス感染症患者に対するアビガン投与が始まっている。感染拡大が広がるなか、政府は緊急経済対策の一つとしてアビガン備蓄量を200万人分まで拡大する決定をしている。

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