東京大学の小林修教授、石谷暖郎特任准教授らの研究グループは、ファビピラビル(商品名アビガン)の合成中間体の高効率合成法を開発した。廃棄物をほとんど生じない。中間体の原料の合成法も検討しており、これまでに複数の効率的な手法を見いだしている。ファビピラビルで国際競争力を保つには圧倒的に優位な製造法による国内安定供給体制の確立が求められるとし、現行のバッチ法に代わる連続フロー法の開発にも取り組んでいる。

 開発したのは3-ヒドロキシ-2-ピラジンカルボキサミドの高効率合成法。水中で分解せず、安定な触媒を開発することで縮合反応を水中で進行させた。収率はほぼ100%で、反応後、生成物を取り除けば水と触媒のみが残る。現行法内の改良であり、製造ルートへの適用が可能だという。

 現行の製造法では縮合反応の際、リン酸緩衝液や反応物と等量の塩基などを用いる。これらの廃棄物は生成物に対して質量比で約1・3倍発生する。その処理に手間がかかるうえ、費用もかさみ製品のコストを引き上げているという。

 3-ヒドロキシ-2-ピラジンカルボキサミドの原料である2-アミノマロン酸ジエチルの合成法の改良にも着目。これまでに、原料のマロン酸ジエチルと簡単な反応剤を組み合わせた複数の手法を見いだしている。いずれも、既知法に比べ大幅に効率化できる。

 研究グループは、すでに連続フローを用いる有機合成、触媒を用いる連続フロー反応の実績がある。ファビピラビルについても、現行のバッチ法に代わる効率のよい連続フロー製造法の開発に取り組んでいる。

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