【シンガポール=中村幸岳】インドネシアの化学品市場で都市封鎖の影響が顕在化し始めた。首都ジャカルタでの商業施設閉鎖や、首都近郊での自動車、家電工場の操業停止などを受け、とくに合成樹脂や合成ゴム、コンパウンドの荷動きが鈍化。生産設備も軒並み低稼働を余儀なくされている。一方、同国化学最大手チャンドラアスリ・ペトロケミカルはナフサ分解炉のフル稼働を維持。ただ、第2エチレンセンター新設の最終決定については先延ばしする方針を固めた。

 今月10日、首都ジャカルタは2週間の部分封鎖に入った。現在、日系自動車ではトヨタ系やホンダ、スズキなどが近郊の工場の操業を一時停止している。ポリオレフィンやPET樹脂・フィルム、合成ゴムなど化学品の需給は、食品包装や医療品向けが堅調に推移する一方、「自動車や二輪車、衣料品、靴に関連する需要が大幅に落ちた」(商社筋)。

 ジャワ島西部バンテン州に集積する石油化学製品の生産設備は、操業継続が認められているものの製品や企業によって濃淡がみられる。例えば現地で高純度テレフタル酸(PTA)からPET樹脂、ポリエステル繊維までの一貫生産体制を築くインドラマグループは今月、PET樹脂設備の稼働率を平均5割以下に落としており、来月をめどに生産を一時停止するもよう。

 三菱ケミカルは、ジャカルタ市内に置く管理部門の人員を一時縮小したうえで、同部門をPTAやPETフィルムの生産設備があるバンテン州メラクに移し、生産を続けている。

 同州にあるチャンドラアスリのエチレンセンターは、ポリエチレン1系列を除きほぼフル稼働。同社は一方で、今年上期に予定していた第2エチレンセンター(エチレン年産100万トン)の投資決定を「半年から1年先延ばしする方針」(同)。2024年を想定する稼働開始も後ずれすることになった。

 化学品物流については、インドネシアの海上物流量の6割以上を扱う最大の商業港タンジュン・プリオクで多少の遅れは生じているものの、大きな混乱はない。しかし国内の製品取引を巡っては、実需不足で買い手の引き取りや支払いの延期を要請するケースも出始めた。このためフル生産を続けるチャンドラも、顧客に対し代金の事前支払いを奨励。それに応じて一部値引き販売を行っているという。

 同国保健省の発表によると21日夕現在、インドネシアの新型コロナウイルス感染者数は7135人。政府は感染拡大を防ぐため、きょう23日から始まるイスラム教の断食月(ラマダン)期間中の大人数での夕食や、断食月明けの祝祭(レバラン)にともなう帰省を禁止する方針。

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