米国食品医薬品局(FDA)は新型コロナウイルスの抗体検査薬について、米アボットやスイス・ロシュなどの計12品の性能を評価し公表した。抗体検査はウイルスに対する免疫獲得を調べるもので、感染の実態把握や回復患者の血漿の治療応用、新型コロナ特有の免疫状態の理解などにつながる。ただ、信頼性の低い抗体検査薬が出回っているとの指摘もあった。結果は臨床検査薬大手の精度が高い傾向だった。

 調査を実施したのは米国衛生研究所(NIH)傘下のフレデリックがん国立研究所。FDAが抗体検査の性能評価をまとめるのは初めてで、調査結果は緊急使用許可(EUA)審査の参考データにも用いるもよう。

 米国で最も早く承認された米セレックスの抗体検査薬は感染初期に発現するIgM抗体と感染後期に発現するIgG抗体の両方を迅速に調べるキットで、感度(陽性の検体を陽性と判定する割合)は93・8%、特異度(陰性の検体を陰性と判定する割合)は96%。ただ、有病率5%の場合、陽性的中率は55・2%、陰性的中率は99・7%と陽性的中率の信頼度は高くない。

 日本で販売計画のある抗体検査薬は高い精度が示された。8日に販売が始まった米アボットのIgG抗体検査薬の感度は100%、特異度は99・6%で、有病率5%の場合、陽性的中率は92・9%、陰性的中率は100%。

 日本で5月以降の薬事申請を計画するスイス・ロシュの抗体検査薬はIgMとIgGの両方を測定し、感度100%、特異度99・8%、陽性的中率96・5%、陰性的中率100%。

 5月下旬発売予定の米オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックスの製品はIgG抗体の検査薬の感度が87・5%、特異度が100%、陽性的中率が100%、陰性的中率が99・3%だった。

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