国内創薬ベンチャーが、新型コロナウイルス感染症の治療薬向けに新技術を提案している。静岡県立大発バイオベンチャーのアデノプリベント(名古屋市千種区)は麹菌由来の化合物が新型ウイルスの増殖を阻害することを発見、3年以内の実用化を目指す。ルカ・サイエンス(東京都中央区)は肺組織の修復を促すミトコンドリア製剤を、コロナにともなう急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療に応用する。

 アデノプリベントが見つけた麹菌由来の化合物は、ウイルスに内在し増殖を促す酵素「メインプロテアーゼ」の働きを抑える。新型コロナウイルス特有のメインプロテアーゼに作用し、活性を阻害できる。人間のたんぱく質を標的にしないため、副作用の懸念も小さい。

 1月に特許を申請しており、共同開発企業を募り、治療薬開発に向け非臨床試験を実施する計画。本来、エボラやインフルエンザなどを対象とする既存の新型コロナ治療薬に比べて効率的に作用するため、少量でウイルスの増殖を阻害できると期待される。食物由来のため安全性が高く、早期の実用化が見込める。

 ルカ・サイエンスが治療対象とするARDSは、新型コロナで集中治療室に入院した重症患者のうち、半数以上が診断されているといわれる。急激に重症化し、生命予後に大きく影響するうえ、有効な治療薬もほとんどない。

 同社のミトコンドリア製剤は、肺組織の修復と免疫機能の回復を同時に狙う。新型コロナ変異種や、新型コロナ以外のウイルス、ウイルスによらないARDSへの効果も期待できる。

 今年中に非臨床試験を実施予定で、5年間、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けることも決まった。京都大学や北海道大学など、複数のアカデミアと連携して開発を進める。

 オンコリスバイオファーマやそーせいグループ、ペプチドリームなども独自のモダリティ(治療手段)でコロナ薬開発に取り組む。今後は臨床開発のノウハウを持つ製薬大手との連携が、早期実用化のカギを握りそうだ。

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