猛威を振るう新型コロナウイルスは、使用ずみプラスチック関連業界にも影響を及ぼし始めている。世界的に経済が停滞するなか、排出されるプラスチック量も使用ずみプラスチックの需要も縮小し、原油価格急落にともなって取引価格も落ち込んでいる。近年、“資源プラ”の名称で使用ずみプラスチックの価値向上に取り組んでいるパナ・ケミカルの犬飼健太郎社長に、業界を取り巻く状況や見通しについて聞いた。

- ビジネスの状況についておうかがいします。

 「当社の資源プラの輸出はまだ4割動いており、完全停止はしていない。ただ、原油価格の急落もあって価格はどんどん下がっており、新型コロナ問題前より3~4割安い水準だ。損切りしつつの販売になるが、企業としての責任もある。一方、買い取りはまったく減っていない。むしろ他社が調達を取りやめた分が当社に流れているため、増えているルートもある。バーゼル条約改正への備えとして混合プラを排除してきた部分もあるので、それを含めたトータルでプラスマイナスゼロという状態だ。販売が減っている分は在庫を増やしているということだが、長く付き合いのある取引先や今後につながる話は受けている」

 「業者によっては取引を停止して休業状態に入るところも出てくるだろう。従来1キログラム60円で販売していた資源プラが現時点で40円程度に下がっている。20円の廃プラだったら、もう値がつかず輸出できない。国内市場は新型コロナの影響を抜きにしても良くはなかった。ポリプロピレン(PP)の主要用途の一つで大手が自社で再生設備を入れる動きもあり、リサイクラーがますます苦境にさらされている。当社は8年も前から資源プラを着想し高品質化にこだわってきたので、今も東南アジアなどに輸出できている。当分はコロナ感染封じ込めの状況に応じて断続的に輸出を行っていくような動きになるのだろう。6月には一旦輸出が回復すると期待している」

- バーゼル条約も改正されます。

 「新型コロナとバーゼル条約で2段階のハードルを乗り越えなければならない。コロナの感染拡大が収まっても経済が回復するまで2年はかかると覚悟している。バーゼル条約の改正は来年1月に施行される予定で、夏にはパブコメが出されるといわれている。かなり厳格化される見込みで、罰則もともなうようになるだろうが、内容は単一で汚れていないプラスチックなら輸出できるという方向で進むとみている。当社が進めてきた“資源プラ”なら乗り越えられる。業界も海外勢を含めてバーゼル改正を歓迎している。厳しい内容でもルールを明確化してほしいというニーズがあるからだ」

- どのような戦略をとりますか。

 「勇気をもって進むか、それとも撤退するか。中途半端は意味がない。当社は今回のことをチャンスだと考え、若い営業担当者を2人ほど増やすつもりで、その準備に入っている。海外の一層の開拓も必要になるし、国内で困っている事業者の助けにもならなければならない」

 「新型コロナ対策として、急いで全員がテレワークするためのシステムを構築している。私自身がシステムエンジニア出身であることも幸いし、今月中には会社に来なくても業務を遂行できる体制を作り上げられる見込みだ」(関口裕介)

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