海外で唾液から新型コロナウイルスの検体を採取する方法が導入されつつあることから、唾液中のウイルスDNA/RNAを採取し長期間保存するキット「OMNIgene ORAL(オムニジーン オーラル)OM-505」の引き合いが海外で増えている。日本では総販売元の協同インターナショナルが研究用試薬として販売しており、日本の解析業者やアカデミック関係者からも問い合わせが増えているという。

 同キットはカナダのDNAジェノテック社の製品で、DNAとRNAの両方を室温で3週間保存できる。新型コロナウイルスはRNA型なので、保存が有効となる。このキット自体では陽性・陰性の判定はできないが、PCR前の検体採取キットとして利用することができる。採取後は検体を専門の機関に送り、検体からRNAを抽出してPCR検査となる。

 現状のPCR検査は、スワブと呼ばれる綿棒を使って鼻腔粘膜などを採取しているが、綿棒を使う場合はある程度テクニックが必要となる。このため医療従事者が採取しなければならず、感染を防ぐためにマスクや眼鏡、キャップ、ガウン、グローブといった防護服を身に付けなければならない。

 防護服も不足気味のため、唾液で陽性・陰性の判別ができれば現状の綿棒を使う方法より採取しやすく、医療従事者の2次感染の可能性も軽減できる。唾液中のコロナウイルスは微量だが、今後、唾液を使ったプロトコルが確立できれば、より簡便で、安全な方法になると考えられる。

 米国と香港では新型コロナに感染したかどうかを唾液で調べる検査方法が始まったという。こうした背景もあって、海外で同キットの引き合いが増えているとみられている。

 なお同キットは、唾液からの細菌・ウイルスDNA/RNAの採取および保存のために開発された研究用試薬のため、病気の診断や創薬、人に施すような目的での使用はできない。

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