新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」に対して、すでに使われているワクチンでも追加接種すれば一定の効果が見込める可能性が分かってきた。米モデルナ、米ファイザー・独ビオンテックは、各社新型コロナワクチンを追加接種することでオミクロン株に対する抗体価が数十倍に増えるとの初期データを発表。承認されている両ワクチンの追加接種を呼びかけるとともに、同株に特化した改良ワクチンの開発も進める。日本でも製薬各社が同株に対応したワクチン製剤の検討を始めている。

 モデルナは、オミクロン株の疑似ウイルスと追加接種(3回目接種)を行った人の血清サンプルを使い、既承認ワクチンなどが同株に対して中和活性があるかを検証した。既承認ワクチンの追加接種用の用量である50マイクログラムでは、追加接種から4週間後の抗体価が接種前より約37倍に上昇。初回免疫用の用量である100マイクログラムでは同83倍に増えた。同社は「オミクロン株の制御に向けた最善の防衛策は、mRNA-1273(既承認ワクチン)の追加接種だ」とコメントした。

 オミクロンに特化した改良ワクチンも開発中。来年2月には臨床試験を始める。デルタ株など複数の変異株に対応したワクチンはすでに臨床試験を行っている。

 ファイザー・ビオンテック製も同様の実験データを得ている。追加接種1カ月後の抗体価は2回目後より25倍に上昇した。近く詳しい評価結果が出る予定。両社も改良ワクチンの開発に着手し、年明けにも治験薬レベルの供給が可能になる見込み。

 日本のコロナワクチン開発でもオミクロン株への対応が進む。塩野義製薬とKMバイオロジクスは国立感染症研究所(感染研)から実際のウイルス株を入手し、開発中のワクチンが有効か動物などを使って検証する。両社とも同株に対応した改良ワクチンも準備し始めており、製法プロセスの検討を進めている。

 KMバイオは先に開発しているワクチンと同時に、変異株や次の新型コロナウイルスにも適用できる「プロトタイプ」ワクチンも薬事申請することを考えている。

 第一三共も、開発中のワクチンをオミクロン株への中和活性を評価する。同社が開発するのはモデルナ製などと同じメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン。実際のウイルス株がなくてもウイルスの遺伝子配列が判明すれば改良ワクチンを短期間で設計できる。

 オミクロン株流行による感染再拡大は、ワクチンがまだ開発段階の国内企業にとって新たな開発障壁となりそうだ。各社とも最終段階の臨床試験の一部を海外で実施する方針だが、多くの臨床試験で対象にしている未感染者を確保しにくくなる。移動制限などが再び強化されて物理的に治験を実施しにくくなる可能性もある。

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