日本にも感染症対策の“司令塔”を-。5日に行った政府の健康・医療戦略参与会合の席上、製薬・医療関係団体からはこんな要望が相次いだ。新型コロナウイルス感染症の第2波到来への懸念が強まるなか、治療薬やワクチンの早期開発には政府、企業、アカデミアの連携が必須と提言。医療資材や医療機器の国産化推進を求める声も続出した。

 同会合には日本製薬工業協会(製薬協)の中山讓治会長、日本医療機器産業連合会(医機連)の松本謙一会長、日本医師会の横倉義武会長らが参与として出席。政府が進める健康・医療に関する成長戦略や医療分野での研究開発についての議論を行っている。5日の会合では、コロナ禍で浮き彫りとなったさまざまな課題を盛り込んだ資料を各参与が示した。

 製薬協の中山会長は、「平常時から有事の感染症対策を統括する司令塔機能を設置し、その下で研究・開発・生産・供給までの一貫した戦略を立案し推進・支援して頂きたい」と訴えた。感染症という疾患特性や予測不確実性を鑑みると、「一企業が単独で行うことは極めて困難」と指摘。国やアカデミアとの協力が欠かせないとした。

 とくに研究開発では、①感染症治療薬・ワクチンの研究開発振興②緊急的にドラッグリポジショニングを実施する体制整備③臨床開発支援④平時からの国主導による産学官連携や国際連携の体制構築-の4点で協力を求めた。具体的な施策などは近く提言書として公表する予定だ。

 大阪大学の森下竜一教授も、米疾病予防管理センター(CDC)を手本とした、いわゆる日本版CDCを内閣官房に置くべきだと主張した。とりわけワクチンでは、「開発研究や基礎技術研究拠点が必要」と強調、今回の新型コロナウイルス感染症対策を軸に、国が主導して基礎、臨床、産業、行政の専門家が集うことを提唱した。

 一方、マスクのような医療資材、人工呼吸器を始めとする医療機器の国産化を推し進めるべきだとの意見も目立った。

 医機連は、今回のような一過性の補助金だけでは事業継続が困難とした上で、「平常時から緊急事態向けの生産を継続的に行う仕組みが必要」と強調した。①流通情報の一元化②平常時から緊急事態時までシームレスに備える仕組み-の2つが具体的な解決策。こうした取り組みを徹底することで、平常時、緊急時を問わず医療機器を安定的に供給できるとした。

 日本医師会も、医療用マスクや防護具などが現場で不足している状況を踏まえ、「国内増産できる環境整備をすべき」との資料をまとめた。さらに、政府や企業と連絡を密にし、連携強化の仕組み構築に乗り出していることも説明した。

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