国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、以下国循)は、世界に先駆けて開発した世界最小・最軽量の次世代型人工心肺システム(ECMO)の治験を開始した発表した。院内外で容易に装着でき、安全に長期間使用できるもので、急性重症心不全ならびに急性重症呼吸不全患者に対する補助循環法として、初めて人での安全性と有用性を確認する。症例登録期間は今年2月10日から22年5月末まで。国循は「心臓や肺にかかわる疾患で苦しむ患者を助けられるよう早期に薬事承認を取得し、実用化させたい」としている。
 治験を始めるECMOシステム「BR13030」は国循とニプロが共同開発した。駆動装置、駆動装置に取り付ける人工肺と血液ポンプからなる回路セット、そして脱血および送血カニューレで構成される。抗血栓性と長期耐久性に優れる人工肺、非接触回転型遠心ポンプなど国循が保有する独自技術に、駆動装置に血流量や酸素飽和度、ガス圧などを計測できる各種センサーを組み込むなどし実現した。
 駆動装置は高さ26センチメートル、幅29センチメートル奥行き20センチメートルと小さく、重量は6・6キログラム(酸素ボンベユニットを含めると8・9キログラム)と軽い。内臓バッテリーと脱着型酸素ボンベユニットにより1時間の連続使用が可能で、医療機関に搬送中の救急車内など院外でも活用できる。起動に要する時間は4分以内と短い。
 従来のECMOシステムは計測機器ごとに情報が表示されていたが、BR13030では駆動機器に搭載されている1つのタッチパネル式ディスプレイで情報を確認できるほか、モーター排熱を利用して人工肺での結露発生を防げるなど医療従事者の負担を軽減できる。
 治験は国循、大阪大学医学部附属病院、関西医科大学総合医療センターで行う。目標症例数は3施設で合計25例。このうち14日間使用は2例以上、呼吸支援のみを目的とするVV-ECMO(静脈脱血-静脈送血 ECMO)は3例以上実施する。
 現在、薬機法で承認されているECMOシステムの使用期間は6時間以内に限られているが、国循では14日間連続使用を可能にしたいとしている。

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