第一三共は8日、新型コロナウイルス感染症治療薬の吸入製剤化を目指した共同研究開発を始めると発表した。同感染症治療薬として期待を集める日医工の急性膵炎薬「フサン」を対象に、第一三共、日医工、東京大学、理化学研究所の4者が取り組む。7月にも非臨床試験に着手し、来年3月までに治験入りする予定。第一三共が開発から申請まで行う計画だ。

 吸入型の抗インフルエンザ薬「イナビル」で得た技術やノウハウを活用する。注射剤のフサンだが、吸入剤とすることで新型コロナウイルスが増殖する気道や肺などに高濃度でアプローチでき、より効果を発揮するとにらむ。患者が服用しやすくなるメリットもある。

 製造販売元である日医工が臨床データの提供やフサンの原薬供給を担当。第一三共が中心となって開発し、臨床試験は同社による企業主導治験となる見通しだ。非臨床試験のデータを踏まえ、当局との相談に基づき治験の詳細を固めるが、「最短ステージを狙いたい」(同社)としている。

 フサンについては、3月に東京大学医科学研究所(東大医科研)が新型コロナウイルスの細胞への侵入を阻止する可能性を示す発表を行っている。実用化を図るなか、より効果的な治療には吸入型とすることが適当と判断。東大医科研と理研が、抗ウイルス薬の吸入製剤で実績のある第一三共に呼びかけ、それに応えた格好だ。

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