米ファイザーは、新型コロナウイルスに対する治療薬やワクチンの開発状況を発表した。治療薬として有望な自社化合物を同定し、当初の計画を前倒しして今夏にも臨床試験を始める。ドイツのベンチャー企業と共同開発するワクチンは今月末から欧米で臨床試験を始め、年内には数百万本レベルの供給を目指す。関節リウマチ治療薬など他の自社品についても、新型コロナ治療薬としての応用可能性を検討する。

 同社は3月初旬、過去に開発していた化合物の中から、新型コロナウイルスに対して抗ウイルス作用を示す化合物が複数ヒットしたことを発表していた。スクリーニング評価を進めた結果、ウイルスを増殖させるプロテアーゼを阻害する化合物を同定した。これから前臨床試験を開始し、抗ウイルス作用の詳細や、静注製剤として応用できるかを検討する。順調に進めば、当初の計画より3カ月以上前倒しとなる7~9月期に臨床試験を開始できるとみている。

 ワクチンは、3月に提携を発表した独バイオNテック(バイオンテック)とmRNAベースのワクチンを開発する。まず欧米で臨床試験を始める。薬事当局の許可を得て、早ければ今月末から開始できる見込み。量産に向けたスケールアップも加速し、年内には数百万本レベル、来年には数億本レベルの量産を可能にする計画だ。

 ファイザーが販売している自社品を転用する治療薬開発も始まっている。抗菌剤「アジスロマイシン」(同社製品名「ジスロマック」)は、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」との併用投与で症状が改善したとの症例報告がある一方、重篤な副作用も出ている。同剤はウイルス性感染症に対する治療薬としては未承認だが、ファイザーとしてもこれらの臨床報告を検証して今後の研究に活用する方針。

 また、関節リウマチ治療薬「ゼルヤンツ」として販売しているJAK阻害剤「トファシチニブ」は、医師主導試験として第2相臨床試験がイタリアで始まる。間質性肺炎を起こしている新型コロナ患者が対象。免疫調整作用がある他の自社品についても、新型コロナ治療薬としての開発を外部の研究機関などと検討しているという。

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