新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受ける化学品市場だが、バイオプラスチックのポリ乳酸(PLA)は高成長を続けている。主用途の包装関連が好調なうえ、欧州をはじめ石油化学系からバイオ系への切り替えも進んでいる。市場規模は2020年も2ケタの勢いで拡大する見通し。コロナ禍でも循環型経済の実現を目指すトレンドに変わりはなく、生分解性のPLA需要は引き続き高まっていきそうだ。

 仏トタルと乳酸大手の蘭コービオンの合弁会社トタル・コービオンPLAのシニア・マーケティング・ディレクター、フォンスワ・デ・ビー氏が化学工業日報の取材に応じ「PLA市場は新型コロナの影響がみられず、10~20%のペースで成長している」と答えた。タイのPTTグローバル・ケミカル(PTTGC)と米国カーギルが出資するネイチャーワークスも「20年第1四半期(1~3月)は前年同期比で販売量が伸びた」(PTTGC)。

 新型コロナによる経済の停滞や景気後退で、自動車や家電向けの合成樹脂需要は弱まっているが、食品などの包装関連は石化系、バイオ系にかかわらず堅調に推移している。外出や飲食店営業が禁止されたことによる内食シフトで、加工食品の消費や宅配サービスの利用の増加が下支えしている。

 さらに、廃プラ問題に対する意識の高まりで、石化系の代替素材としてバイオプラに転換する動きが加速していることもPLAの追い風になっている。「欧州の食品スーパーが今年に入って野菜の包装にPLA製を採用するなど拡大している」(ビー氏)。

 世界的な景気悪化や原油価格の下落で、包材に安価な石化汎用樹脂の採用を優先しバイオプラへのシフトが減速する可能性がある。しかし、「食品・飲料などのブランドオーナーが持続可能性、循環型経済の実現を重視する姿勢に変化はみられず、PLAは景気の影響に左右されることなく需要が引き続き増加していく」(同)見込み。

 一方で、供給力の不足が課題となる。19年のPLA世界市場は推定20万トンで、メーカーはネイチャーワークスが米国ネブラスカ州に年産能力15万トンの工場を持ち、そのほかは規模が小さい。トタル・コービオンPLAが18年、タイで年産能力7万5000トンのプラントを立ち上げ商業生産を開始したが「19年の稼働率は3割程度」。世界的に需給がタイトになっている。

 トタル・コービオンPLAタイ工場の稼働率は今年7割程度、21年にフル稼働を想定している。供給力より需要の伸びが上回り、製品不足の状況が続きそうだ。

 PLA新設ではネイチャーワークスがタイで年産能力7万5000トンのプラント建設をFS中。しかし、今年予定していた最終意思決定を、21年に先延ばしするもよう。(岩﨑淳一、ワンギャオ・シッティガン)

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