中国の第1四半期(1~3月)の経済成長率はマイナス6・8%と統計公表以来初のマイナスとなった。3月単月の経済指標は1~2月比で改善しているものの、新型コロナウイルスの欧米への蔓延による外需の落ち込みが懸念され、景気拡大には一層の内需拡大が迫られている。中国経済に詳しいみずほ銀行(中国)有限公司の細川美穂子中国アドバイザリー部主任研究員に現状認識を聞いた。

◆…第1四半期の統計をどう分析していますか。

 「3月13日の時点で、われわれは6・0%のマイナスと予想していたが、それを下回る大幅な落ち込みとなった。落ち込みもかなりのものだが、これだけのマイナスをきちんと開示したことを評価したい。特徴的なのは消費の落ち込みだ。需要項目別の寄与度をみると、1~3月期は総資本形成(国内投資)、最終消費支出、純輸出の3項目すべてでマイナス寄与となったが、とりわけ最終消費支出がマイナス4・4ポイントと大きい。消費主導型の経済に転換してきたといわれてきたが、やはり消費が減退した時のマイナスインパクトは甚大だった。中間層が拡大し、経済に対する個人消費の依存度が大きくなってきたことの裏返しともいえる」

◆…3月単月の主要統計は改善傾向にあります。

 「生産、投資、消費とも減少したが、1~2月からは確実に改善している。3月の工業付加価値生産額は同1・1%減となり、1~2月の13・5%減から持ち直した。とくに、ハイテク品製造は8・9%増、コンピューター・通信その他電子設備製造が9・9%増、工業用ロボット12・9%増と加速している」

◆…新車販売は深刻です。3月は43・2%減の143万台となり、引き続き大幅なマイナスを記録しました。

 「小型乗用車減税措置が17年末に終了した反動に加え、米中摩擦などにともなう先行き不透明感が消費マインドに影響してきたが、新型コロナでの移動制限による生産停滞や販売不振が新たな下押し要因に加わった格好だ。19年の社会消費品小売総額約41兆元のうち自動車消費の占めるウエイトは10%程度と高い。感染リスクが払拭されて雇用・所得環境が安定するまで本格的回復は見込みにくいが、各地方政府も自動車消費刺激策を打ち出しており、政策効果を受けた販売回復の兆しも一部ではみられつつある」

◆…経済見通しは非常に困難ですが、第2四半期以降をどう見通しますか。

 「人民銀行の通貨政策委員のなかでも、今年の成長率を計算するのをやめた方がいいという議論が出るくらいで、それだけ不確定要因が多いということだ。1~3月よりは回復するだろうが、第2四半期も戻りは鈍いのではないか。外需も弱く、3月の前半まではまだ荷動きがあったが、4月以降の先進国の貿易は減速が予想される。中国国内にしても、いぜんとして失業率は6%前後で高止まりしている。コロナの影響を受けている人がそれだけいるということだ。GDPは通年では1%台後半にとどまるのではないか。21年については、感染第2波が起こらないといった楽観的な見通しにたてば、内需拡大策が下支えして1ケタ台後半の成長もあり得る」

◆…日系企業の動向は。

 「総じていえば、思いのほか悪くないといったところだろうか。自動車も民族系に比べ、日系への影響は比較的軽微だ。エレクトロニクス業界も年後半の減速懸念はあろうが、足元は堅調にみえる。ただ、大手企業は多少の波があっても在庫の積み増しなどで調整ができているが、中小企業の多くは資金繰りに苦しんでいる。リーマン・ショックの時と同様、中小の不振が半年、一年先にじわじわと大手企業に影響する可能性もある」(聞き手=但田洋平)

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

インタビューの最新記事もっと見る