シスメックスは新型コロナウイルス感染症の診断や治療の各場面に用いる検査技術を総合的に開発する方針だ。感染やウイルスに対する抗体価を調べる抗原・抗体検査に加えて、重症時に起きる呼吸不全を予測する検査手法などを開発する。一連の検査は日本やアジアに導入済みの全自動装置「HISCL」で行え、家次恒社長は13日開催の決算会見で「欧米にも展開したい」と語った。

 HISCLは化学発光法を用いた免疫測定装置で感度が高く、ウイルス防御能を示す抗体価を定量できる。浅野薫専務は抗原・抗体検査を1時間で最大200件処理できる利点もあり、販売中のPCR検査キットも含めて「全体の検査フローを最適化できる。(指摘されている)検査体制の不足をなくすことができる」と語った。

 抗原・抗体検査はいずれもアッセイ系の構築を終え、ともに5月中旬から臨床評価を始める。抗体検査は研究用試薬としても発売し、抗原検査は早期の薬事承認をめざす。免疫測定分野は日本でも米アボットとスイス・ロシュの地盤が厚く、新型コロナをいかに商機に結び付けるかが注目されそうだ。

 新型コロナは重症になるとサイトカインストームという免疫暴走に進展し、呼吸不全などに陥る。シスメックスではHISCLで炎症性サイトカインを検出する技術も開発し、重要度予測や治療経過を見極める検査サービスも6月から開始する。

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