ディスプレイメーカーが苦境にあえいでいる。新型コロナウイルスの感染拡大によって、スマートフォン向けパネル需要が急減している。液晶よりも有機エレクトロルミネッセンス(EL)が落ち込んでおり、サイズでは6インチ以上が厳しい状況にある。6インチ以上の有機ELパネルはiPhoneやギャラクシーといったハイエンドスマホで多用されているため、稼ぎ頭でのダメージが最も大きいといえる。原材料・部材を供給する化学メーカーにも影響はおよぶ。

 ほぼすべての主要ディスプレイメーカーのスマホ向け出荷が落ち込んでいる。韓国のサムスンディスプレイとLGディスプレイに加え、中国の京東方科技集団股份有限公司(BOE)、南京中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)、華星光電技術有限公司(CSOT)、昆山龍騰光電有限公司(IVO)、天馬微電子股份有限公司(天馬)などが減速している。

 このほか日本勢ではジャパンディスプレイ(JDI)とシャープ、台湾勢では友達光電股份有限公司(AUO)、瀚宇彩晶股份有限公司(HannStar)、群創光電股份有限公司(イノラックス)などに影響が及んでいる。

 英調査会社OMDIAによれば、2020年1~3月のスマホ向けパネルの出荷枚数は約7800万枚。当初予測していた1億1900万枚から大きく落ち込んだ。昨年12月時点では楽観的にみていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化によって想定外の減少となった。パネルの種類別では、ハイエンドスマホに多く使われる有機ELが最も落ち込んでおり、薄膜トランジスタ(TFT)液晶、低温ポリシリコン(LTPS)液晶、アモルファスシリコン(a-Si)と続く。

 2月の出荷枚数は約1億200万枚で、1月と比較して17%減少している。サイズ別で最も落ち込んだのは、ハイエンドスマホに使われる6インチ以上。2月の出荷量は前月比24%減となった。5インチ台も減少した。一方、3インチ台は同57%増、4インチ台は同12%増と拡大しているが、ローエンド向けのためディスプレイメーカーの減収をカバーすることはできない。

 ディスプレイ各社は当初、サプライチェーンの混乱による原材料・部材調達の遅れを懸念していた。ここにきて欧米、日本、東南アジアなど世界規模で外出規制やロックダウン(都市封鎖)が断行され、消費活動が大きく阻害されている。いまだ収束する気配はない。川下での消費低迷は川中、川上にも及ぶことは必至。サプライチェーン全体にわたり戦略見直しに迫られている。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

先端材料・部材の最新記事もっと見る