ミルボンは、新型コロナウイルス禍による生活様式の変化が髪や頭皮に与える影響を明らかにした。3万4000人以上の女性の頭皮データを解析したところ、コロナ前よりベタつきの原因となる頭皮の皮脂量の増加を確認。マスクの着用により頭皮の皮膚温も上昇し、増加につながった可能性が考えられるという。ほかにも、白髪や抜け毛の指標とされる頭皮の赤みでは改善がみられた。今後もビッグデータの収集と解析を続け、美しい髪を維持する効果的なヘアケア製品の開発に生かす。

 新型コロナ流行にともなう長期間のマスク着用やステイホームの呼びかけなどを背景に、スキンケアの分野ではマスク内の蒸れによる肌荒れや外出自粛でストレスにつながる影響などビッグデータに基づくさまざまな研究が報告されている。一方、頭皮に関しては科学的な調査が進んでいない。

 ミルボンは47都道府県の美容室に協力を仰ぎ、来店する顧客のマイクロスコープ画像を含む頭皮データを遠隔で取得。コロナ禍における頭皮状態の変化を明らかにするため、蓄積した延べ3万4678人の女性の頭皮データを用いて緊急事態宣言が初めて発令された2020年と19年の状態を比較した。

 その結果、20年夏の頭皮の皮脂量が顕著に増加。とくに9月は前年に比べて2倍以上に増えていることが分かった。マスクの着用によって顔の皮膚温が高くなると、皮脂量が多くなりニキビなどにつながることが指摘されている。同様に頭皮でもマスク着用で頭皮の皮膚温が上昇し、皮脂量が増加したと分析する。

 また、20年5月から6月にかけて頭皮の赤みは前年より改善している結果が示された。赤みが強い頭皮は炎症が進んでおり、白髪や抜け毛が増えやすい状態にある。頭皮の炎症を抑えて赤みを改善するためには、抗炎症剤などを配合した頭皮用ローションの活用が有効だ。

 19年5月の頭皮用ローションの使用率が約22%だったのに対し、コロナ禍の20年5月は使用率が30%以上に向上。ステイホームによる巣ごもり生活で「おうち美容」が広がった結果、頭皮用ローションを使う女性が増え、赤み改善につながった可能性が考えられるとみる。

 今回の調査結果から、コロナ禍における生活様式の変化が顔だけでなく頭皮についても影響を与えていることが確認できた。過剰な皮脂は頭皮のベタつきやニオイを引き起こす。開発本部皮膚科学研究室の永見恵子チーフリサーチャーは「マスクの着用が続く間は、頭皮の洗浄ケアをしっかり行う必要がある」と話している。(高橋篤志)

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