中外製薬の奥田修社長は、化学工業日報の取材に応じ、同社創製の抗体医薬品「アクテムラ」を新型コロナウイルス感染症に用いる適応拡大について、これまでの試験結果の「詳細解析を優先していく」との考えを示した。国内外での治験では結果が分かれるなか、「リスクとベネフィットを総合的に評価することが重要」と強調し、日米欧の規制当局とも「相談中だ」と語った。

 アクテムラをめぐっては、英国での大規模治験で死亡リスクが低くなるとの報告があがる一方、同社などが行った抗ウイルス薬「レムデシビル」との併用試験では主要評価項目が未達に終わるなど異なる結果が出ている。奥田社長は、「新型コロナウイルス感染症は全く新しい疾患。標準治療も変わってきている」と背景を説明。投与時期や対象患者の絞り込みなど治験を組む条件が揺れ動いていることが影響している可能性を指摘した。

 現在、中外はアクテムラ以外に3品目で同感染症治療薬の開発を進めている。このうち、スイス・ロシュから導入した抗体カクテル療法に関しては、日本での年内の治験実施も含めて「当局と協議中」。また、米アテアが創製、ロシュから導入した「AT-527」も国内治験に向けて試験デザインの検討などを行っている段階だ。

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