京都府立医科大学と大阪大学の研究グループは、すべての変異株に有効な新型コロナウイルス感染症治療薬候補を開発したと発表した。新型コロナウイルスが感染する際の受容体であるACE2たんぱく質を改変し、ウイルスとの結合力を約100倍に高めたウイルス中和たんぱく質を作り出すことに成功した。英国で見つかった「N501Y変異」、免疫逃避型系統株の「E484K変異」、インドを中心に流行している「L452R変異」への効果も確認している。現在、生命科学インスティテュートと共同で前臨床試験に取り組んでいる。

 京都府立医科大の星野温助教、阪大蛋白質研究所の高木淳一教授、阪大微生物病研究所の岡本徹教授らの研究グループの成果。自然界にはみられない高性能たんぱく質の作出技術である指向性進化法を用いてACE2たんぱく質を改変し、野生型ACE2たんぱく質に比べ、結合力を約100倍に亢進させた3種類の親和性ACE2を取得した。これら親和性ACE2を活用した中和たんぱく質を新型コロナウイルスに感染したハムスターに投与したところ、高い治療効果を示した。

 指向性進化法による高親和性ACE2変異体の作製期間は約1カ月。抗体製剤と同等の治療効果があるうえ、同製剤と異なり患者検体が不要という利点もある。
 成果は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に掲載された。

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