新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて抗原検査活用を―。同感染症対策を厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」のメンバーがこんな提言をまとめた。倦怠感やのどの痛みなど軽い症状が出ている人を対象に積極的な抗原検査を行うことによって、職場などでのクラスター大規模化を阻止するのが狙い。提言内容を踏まえ、厚労省も取り組みを進めていく方針だ。

 アドバイザリーボードの脇田隆字座長(国立感染症研究所所長)ら6人が連名で、「抗原定性検査を活用した検査戦略案(たたき台)」として提出した。用いる対象として検討するのは、①高齢者施設や医療機関②大学・大学院③クラスターが多く発生している職場の3つ。専用設備もいらず、手軽に使える利点を前面に、軽症状者をいち早く補足し、感染拡大を防ぐことにつなげる。

 PCR検査に比べると感度が低いといった問題を抱える抗原検査だが、同案では「二次感染を生じさせるリスクの高い陽性者を見つけるうえでは有効」と強調。性能に関する科学的証拠(エビデンス)も蓄積するなか、「ウイルス量が多い場合には感度が高い」と続け、使い方次第との見方を示した。ただ、すでに行っているPCR検査による行政検査などを補完するものとの位置づけで、薬事承認を受けていることが前提となる。

 職場などで軽症状者が複数確認された時にまず抗原検査を実施し、陽性者が見つかった場合に広くPCR検査を行うといった構想を掲げる。検査費用は行政が負担し、使いやすい環境を整える。また、多くの医療機関で軽症状者に抗原検査を実施できるように呼びかけていくことも盛り込んだ。

 脇田座長は、軽症状者のPCR検査陽性率が高いことに触れ、「のどがイガイガするなど軽い症状の時は受診しない可能性が高い」と指摘。「いかに検査に結び付けていくかが大切だ」と訴えた。

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