日本新薬は、新型コロナウイルス感染症治療薬の治験を年度内に始める。まず別の疾患に対する治療薬として販売している「セレキシパグ」(製品名・ウプトラビ)の治験を米国で開始。来年度にはコロナウイルス全般に有効な核酸医薬の治験入りも目指す。JAK阻害剤2剤の開発も検討する。

 最初に治験入りしそうなのが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬として販売しているセレキシパグ。肺高血圧症などで狭くなった血管を拡張したり、血小板の活性化を抑制したりする作用がある。コロナ感染者は血栓症リスクが高いとされており、セレキシパグの抗血栓症作用による治療効果を期待する。

 すでに製品化されているため、早期開発が可能とにらむ。日本より感染者が多い米国で、今年度中にも治験を始める。同剤は元々米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と開発・販売提携しているが、コロナ適応でも連携するかは非開示。

 コロナ治療薬として新たに開発するのが同社の独自技術を活用した核酸医薬だ。コロナウイルスに対して複数の治療標的を持つ長鎖の一本鎖RNAを開発する。細胞内に入ると別々の標的を持つsiRNAに切断され、あらゆるタイプのコロナウイルスを死滅できるよう設計している。動物モデルによる薬効評価などが終わり、治験に進める候補品の絞り込みが近く完了予定。安全性評価試験などを行い、来年度中の治験開始を目指す。

 骨髄線維症治療薬として開発中のJAK2阻害剤「NS-018」、炎症性疾患の治療薬として治験を始めたJAK1阻害剤「同229」のコロナ適応での開発も検討中。同阻害剤は免疫が暴走して症状を著しく悪化させる「サイトカインストーム」への効果が期待されている。米イーライリリーの同阻害剤「バリシチニブ」(オルミエント)がコロナ治療薬として国内承認されている。類似薬は治験で強い有効性を確認できず苦戦しており、日本新薬は臨床上の位置づけや対象患者などを見極めたうえで治験計画を決める方針。

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