英系アストラゼネカ(AZ)日本法人は2日、新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」の国内臨床試験を再開したと発表した。英国の第3相臨床試験(P3)で有害事象が疑われる症例が出たため、9月上旬から全世界で試験を自主的に中断していた。日本でも試験の文書改訂を行ったうえで、約1カ月ぶりに再開する。英国などではすでに再開し、欧州当局は販売承認申請に先駆けた「ローリング審査」に着手した。一方、米国ではまだ再開しておらず、開発に遅れが生じている。

 英国のP3で有害事象が疑われる症例が報告されたことを受け、英AZは9月6日からAZD1222のすべての臨床試験を自主的に中断。安全が確認できたとして翌週には英国などで試験を再開した。日本でも医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議し、今月2日付で国内P1/2を再開した。目標とする症例数250例に変更はないが、治験文書を一部改訂した。具体的な変更点は明らかにしていない。

 英AZは、まず来年3月までに3000万回分のワクチンを日本へ供給することで政府と合意している。

 欧州は、承認審査に動き出した。欧州医薬品審査庁(EMA)は1日、前臨床試験など既に解析されたデータを順次入手し、申請前から審査を進めていくローリング審査に着手したことを発表。これまでの非臨床・臨床試験で中和抗体やT細胞の産生が認められていることから、審査手続きを開始できると判断した。

 一方、米国の臨床試験は保留状態が続いている。同国では3万例規模のP3を計画している。英AZは2日、「米国食品医薬品局(FDA)が治験再開を判断できるよう、必要な情報を提供して協力していく」と発表した。

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