東洋紡が新型コロナウイルス感染症の検査薬の対応を着々と進めている。敦賀バイオ工場(福井県敦賀市)では現在、平常時(2019年)の20倍強となる月産数十万検体分の汎用のPCR検査試薬を生産。中国の検査薬メーカーと日本の検査機関へ供給している。ウイルスから遺伝子を抽出する前処理を省略できる同検査試薬キットも開発中。60分以内での判定を目指している。化学合成によって人工的に作製したウイルスを用いた検証で良好な結果を得た。公的に検体を入手できれば、1カ月以内に開発できる見込み。まずは月16万検体分、最大月50万検体分までの供給を想定している。
 増産している「サンダーバード」はさまざまなウイルスの遺伝子を増幅できる汎用のPCR試薬。国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに新型コロナウイルス検出法に用いる試薬として収載されている。
 サンダーバードは1月から平常時の20倍まで増産。現在も20倍強に当たる月産数十万検体分を生産して、東洋紡(上海)生物科技有限公司を通し、約9割を中国の検査薬メーカーに販売。残り1割を日本国内の検査機関に供給している。同社ではさらに5倍程度までの増産が可能だ。
 一方、同社では新型コロナウイルスに特化したPCR検査試薬キットの開発も進めている。咽頭拭い液などの検体中のウイルスから遺伝子を抽出する前処理を省略することで検査の迅速化につなげる考えだ。
 同社はこれまでに前処理を省けるさまざまな方法を検討してきた。すでに実績のあるノロウイルス検便検査用試薬を応用し、新型コロナウイルスに特化したPCR試薬の開発などを進めている。保有する高度な試薬酵素技術と配合のノウハウを活用することで高感度な試薬を実現させ、PCR検査時の温度上昇のみで遺伝子を抽出できる仕組みの構築などを目指している。

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