中国での新型コロナウイルスワクチンの開発が、最終段階に進んでいる。中国の国有製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)子会社が先週、最大1・5万人規模の最終治験を中東で開始。バイオ系製薬の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)も21日からブラジルで大規模治験を開始。世界で臨床試験が行われているワクチンの約3割が中国勢。欧米勢と比較して、臨床試験の進捗や生産体制などがあまり明らかにされてこなかったが、世界一番手の実用化へ着々と開発を進めている。

 世界保健機関(WHO)によると、世界で臨床試験中の新型コロナワクチンは7月15日時点で23種類あり、うち7種類が中国勢だ。なかでも最終治験にあたる第3相臨床試験(P3)段階まで進んでいるのが、シノファーム子会社、シノバック、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)の3社。中国は感染者が減少しているため、欧米以外の感染流行地を探してP3を立ち上げている。

 シノファームは今月15日、アラブ首長国連邦(UAE)でコロナワクチンのP3を開始。200カ国・地域から多様な人種が在住している地域特性に注目し、現地政府や企業と提携した。最大1万5000例規模の試験になる見込み。生産体制の整備も進めており、4月に北京市、7月に武漢市(湖北省)で製造設備が完成。合わせて2億接種以上の供給能力があるという。国有企業の従業員が海外出張する際の予防ワクチンとして使われ始めているもよう。

 シノバックも、ブラジルのワクチン大手ブタンタン毒蛇研究所と提携し、同国でP3を行う。現地時間21日に始まる予定。医療関係者9000人程度を組み入れる。インドネシア、バングラデシュでもP3を計画している。同社も年産1億接種レベルの工場を建設中だ。

 当初は米モデルナと1番手を競っていたカンシノは、P3を前に足踏み状態。5月にもカナダで同試験を始める計画だったが、いまだ開始が発表されていない。加政府によると、治験薬の輸出に関連する中国側の許可が降りず遅れが生じている。同社は4万例規模の試験を目指しており、ブラジル、チリ、ロシア、サウジアラビアとも協議中とされる。中国では先月、共同開発相手である人民解放軍での使用が承認された。

 国内の量産体制も強化されてきた。国有IT大手・中国電子信息産業集団(CEC)のエンジニアリング子会社は、同国初となるバイオセーフティーレベル3に対応したバイオ医薬品工場を建設した。コロナワクチンを年間1億本生産できるという。

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