KMバイオロジクスは、新型コロナウイルスワクチンの第3相臨床試験(P3)を今秋にも開始する。症例数は3000人規模を想定し、海外も含めて行う。評価する有効性は実際の予防効果ではなく、中和抗体量など間接的な項目とする。メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンなど先行する他社製品と直接比較する。結果をみて来年度中に承認申請し、2023年度の供給開始を目指す。

 同社は現在、健康成人210人を対象にP1/2を実施中で、プラセボ群と比較した安全性と免疫原性を評価している。全症例で2回接種が完了し、8月にも結果が出る予定。結果を踏まえ、9月以降にP3を開始する。

 P3は米ファイザー製など承認ずみの他社ワクチンと比較する試験として行う。症例数は薬事当局が安全性評価に必要な規模として求めている3000人程度になる見通し。日本だけで早期に集めるのは難しいため、海外でも症例登録を行う。有効性の評価基準は免疫原性で、抗体価などを測定する。ファイザーなどは実際の発症予防効果を海外の大規模治験で確認してから申請しているが、KMバイオは免疫原性や動物実験などの間接的な有効性データで申請に持ち込み、予防効果の検証は承認後に市販後試験などのかたちで行う。

 間接的な有効性データで申請する開発戦略が可能になったのは、薬事当局が方針転換したため。厚生労働省は国内メーカーに対しても大規模治験で予防効果を確認してからの申請を求めてきたが、国産ワクチンの早期開発を促すため要件を緩和。一定規模の試験で免疫原性や安全性のデータがあれば、承認申請を容認する考えに転換した。

 順調に進めば来年度中に承認申請し、23年度の供給開始を目指す。すでに他社ワクチンを接種した人に対する追加免疫のワクチンとして使われることを想定している。

 変異株に対する有効性も評価する。治験参加者の血清サンプルを使い、各変異株に対して中和活性があるか検証する。変異株に対応したワクチンの再開発が必要になった場合、変異株入手から最短3~4カ月で供給開始できるという。変異株や次の新型コロナウイルスにも適用できる「プロトタイプ」ワクチンとしても薬事申請する。

 KMバイオが開発するのは、実際のウイルスを無害化して投与する不活化ワクチン。アフリカミドリザル由来のベロ細胞を使い、ビーズ上でウイルスを大量培養する。効果を高めるアジュバント(免疫増強剤)には使用実績が豊富な水酸化アルミニウムを使う。

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