シスメックスは11日、開発を進めてきた新型コロナウイルスの抗体検査薬の臨床評価結果を発表した。抗体を保有しているか、していないかを明確に判別できる性能が認められた。これを受けて同社では神戸市内の研究拠点で受託解析サービスを12日から開始し、来月22日には研究用試薬としても売り出す。疫学研究やワクチンの効果検証といった利用を見込む。

 5月から実施してきた国立がん研究センター、国立国際医療研究センターとの共同研究の成果。シスメックスの化学発光酵素免疫測定法を用いた抗体検査薬の性能を、両機関が提供した検体を使って評価した。

 シスメックスの抗体検査薬は、新型コロナウイルスの構造中心のヌクレオカプシドたんぱく質(N抗原)と、突起部のスパイクたんぱく質(S抗原)のそれぞれに対するIgG抗体を高感度に定量化できる。IgG抗体は感染中期から回復期に発現し、免疫の獲得状態の指標になる。

 がんセンターが保管していた新型コロナ流行以前の血液(陰性群)と、新型コロナ患者の退院時の血液のそれぞれのIgG抗体の濃度を比較したところ、患者群の抗体量は高値、陰性群は低値となり、その違いを明確に判別できた。

 抗体検査薬はシスメックスの全自動免疫測定装置「HISCL」向けで、1時間あたり200テストを処理できる。受託解析サービスは研究機関や企業などからの研究利用を見込む。研究用試薬としても販売し、利用機会を広げる。

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